1974年にデビュー以来、コンパクトFF車のベンチマークであり続けるフォルクスワーゲン ゴルフ。日本でも間もなく8代目となる新型が発表されるが、その前に初代から現行型までのゴルフを振り返ってみたい。今回は、4代目ゴルフのデザインについて語ろう。

ゴルフ1を模範として生まれたゴルフ4

画像: 1998年に発表されたニュービートル。「丸」がデザインのテーマになっていた。シャシはゴルフ4がベース。

1998年に発表されたニュービートル。「丸」がデザインのテーマになっていた。シャシはゴルフ4がベース。

ゴルフ4が開発された当時、すでにゴルフ1はカリスマ的存在になっていた。フォルクスワーゲンのブランド強化のためには、偉大な元祖ビートルをフィーチャーするのは有効だけれども、ゴルフ4は、自身にとってより近い存在のもうひとつのルーツであるゴルフ1を再現した。今やゴルフも、ビートルの後を継いでビッグネームのクルマになっていたのだった。もっとも、次のゴルフ5ではビートルのモチーフを取り入れて、物議をかもすことになるのだが・・・。

ゴルフ4は、ゴルフ1を模範としたうえに、さらに確信犯的にバウハウス的なデザインを徹底した。歴代ゴルフは、基本的に毎回正常進化型のモデルチェンジをして、先代モデルを継承しつつ進化させており、ゴルフ4でもゴルフ3との連続性を残してはいるのだが、ゴルフ1を模範にしたことが目立っている。ゴルフ3は空力を追求して前後を絞った樽型形状が目立っており、ゴルフ4はさらに丸くなっても良さそうなところだが、逆に四角さが目立っていた。

またゴルフ3では、ボディサイドのプレスラインが多かったが、ゴルフ4は大胆にもそれを廃止して、まったくのフラットで平面的なボディにした。フラットさがとくに目立つのはボディサイドで、ゴルフ1のデザインのオマージュである前後のホイールアーチだけが出っ張っている。さらにそのフラットなボディサイドの、リアクウォーターパネル部分のパネルの継ぎ目のラインが見どころであり、ラインを整理して、見事な平行な「く」の字型にデザインされていた。

これもゴルフ1の意匠の継承なのだが、それを現代的に昇華させてデザインしたのだ。こういったデザインがさまになるのは、ボディパネル同士の隙間が狭く、ボディの工作精度が高いからこそでもあった。

原理主義的ともいえるほどこだわってデザインされたゴルフ4だが、ただ、実際には一見オーソドックスにも見える。ひとつには、結果として2BOXカーの最大公約数的な形になったからだろう。またゴルフ4が生産されていた頃(1997〜2003年)、日本などでは車高の高いミニバン的なクルマが増えて、ホンダのフィットなど新しいモノフォルム的ボディ形状がトレンドになっており、2BOXスタイルを維持するゴルフ4は、保守的に感じられることがあった。

けれども、今あらためてゴルフ4を前にしてじっくり見てみれば、その精緻でクリーンなボディが、やはり非凡なこだわりの作だったことがよくわかるだろう。(文:武田 隆)

画像: ゴルフ4のヘッドランプは、ランプベゼルにウインカーなどをすべて収めており、デザインのシンプル化を徹底した。

ゴルフ4のヘッドランプは、ランプベゼルにウインカーなどをすべて収めており、デザインのシンプル化を徹底した。

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