トヨタ車の多くの高性能エンジンをヤマハが開発
トヨタ 2000GTの話に戻そう。当時、開発陣は1965(昭和40)年10月に開催される東京モーターショーへの出品を目指していた。トヨタが1999(平成11)年に発行した資料を見ると、開発体制のチーフは河野主担当員(主査代行)、機関担当:高木、懸架担当:山崎、車体、意匠担当:野崎と記されている。機関=エンジン担当の高木氏が、ヤマハとエンジンを開発していたわけだ。トヨタはクラウン用に開発していたM型エンジンを改良して高性能化することを目指していたが、当時の開発力は十分でなかったようだ。
そこで、すでに二輪車で高性能エンジンを開発していてヤマハにDOHC方式のヘッドユニットと車体開発、生産までトヨタは委託した。排気量1988ccの3M型エンジンのDOHC化はヤマハが行ったわけだが、基本設計はM型系の血筋を引いている。また話が脱線するが、2020年に発表されたヤリスなどに搭載された1.5L 3気筒エンジンの型式は、M15型を名乗る。当時のM型系とは当然ながら関係はないが、半世紀以上を経てM型系を名乗るエンジンが新設計され、再登場したわけだ。
3M型以降、セリカなどに搭載された2T-G型やレビン/トレノAE86に搭載された4A-G型、マークIIなどに搭載された1G-G型、3S-G型、1JZ-G型などもヤマハが開発と生産を受託していた。とくに4A-G型や1G-G型はヤマハならではの高回転指向のNAエンジンで、その頂点を極めたのがレクサスLFAのV型10気筒エンジンだった。この1LR-GUE型の10連独立スロットルのレスポンスと甲高く乾いたエキゾーストノートは、トヨタとヤマハの最高傑作といっていい。
このほかにもレクサスのISやクラウン、マークXに搭載される2.5LのV6エンジンもヤマハが受託生産していたし、近年搭載車が増えているのが2L 直4の8AR-FTS型直噴ターボで、これも開発と生産をヤマハが担当している。
ヤマハが製造したエンジンには、ヘッドカバー近くに「YAMAHA」の文字が刻まれているが、近年のモデルはエンジンカバーが装着されていることが多く直接確認はしにくい。こうした開発と生産受託の関係が続いているため、ヤマハをトヨタグループの企業と思っている人もいるようだが、資本関係はなく独立している。今後もトヨタとヤマハのコラボで、ぜひともLFAのV型10気筒に続く、すばらしい咆哮(ほうこう)とレスポンスのいいエンジンを開発してもらいたいものだ。(文:丸山 誠)