四半世紀以上前に登場した最初のRSモデルのコンセプトを忠実に受け継ぐ、2台の最新アウディ「RS」アバントが日本に上陸した。ここでは最高の実用性と速さを兼ね備えた稀有な2台の実力を測る。(Motor Magazine2021年3月号より)

乗り味はかつてのRSのようなハードさは減り快適性が増した

威圧感たっぷりの見た目の印象をそのままに走り始めると、いずれも拍子抜けするほど扱いやすいことに驚かされた。RS4アバントはベースモデルとの車格差がさほど大きくないことも一因だが、RS6アバントはやはり4WSの効果があらたかで、狭所での小回り能力的なところはRS4アバントにも勝るほど。幅方向では気遣いは要するも、取り回しは思いのほかストレスを感じない。

その4WSは快適性の面でも利として働いているようで、RS6アバントの乗り心地は600ps、そして22インチタイヤというきな臭いスペックを鮮やかに裏切るしなやかさだ。ドライブモードをコンフォート、あるいはオートにセットして走る限り、些細なオウトツを鷹揚にいなしながら至極滑らかに走っていく。大きな入力の受け止めでも跳ね返すような「痛さ」が伝わらないのはエアサスペンションの包容力も奏功しているのだろう。

一方で、コイルサスペンションのRS4アバントの側も持てる力を受け止める設定であることを思えば、望外なほどに乗り心地は整えられている。低〜中速域でも外乱による細かなピッチやロールはしっかり丸められていて、高速域では上屋の据わりの良さがしっかりと感じられる。目地や路肩の段差を跨ぐ際にも、ダイナミックライドコントロールが悪さをすることもない。

もちろん両車ともに、バネ下重量を大幅に低減するオプションのセラミックブレーキ(RS4アバントはフロントのみ)を装着していたことは考慮すべきだろう。とはいえ、従来のRS銘柄のイメージからすればこの両モデルの日常域でのライドフィールは驚くほど洗練されている。このところA4、A6、A8と、アウディの非SUV系の乗り心地に感心させられることは多かったが、その好印象がRS4アバントやRS6アバントにも反映されたかのようだ。

ワインディングでの振る舞いはさすがに体躯の利もあってRS4アバントの軽快さや一体感がひときわ際立つかたちとなる。が、ここでも驚かされるのはむしろその巨体をまるで意に介さないRS6アバントの敏捷ぶりだ。

4WSと駆動コントロールの連携に意図的な曲げ感は感じられないものの、確実にコーナーのインをたぐり寄せていく、そして0→100km/hを3.6秒というスーパースポーツ級の瞬発力を持て余させないあたりはまさに、クワトロのなせるところだろう。この点はRS4アバントも然りで、むしろリアデフの差動からくる回頭性の高さなどはこちらの方がより明快に現れる感がある。

ともあれ強烈なのはトラクション能力の高さだ。試乗時の気温は2〜3度で路面状況も悪かったため、念入りにペースを調整していったが、危うい挙動をみせることは一切なく、安心してそのパワーを扱うことができた。

かつてのRSシリーズは、その盤石のメカニカルグリップと引き換えに、操舵のフィードバックやアシの動きにもガツガツとそれなりに粗野な感触が伴うクルマだった。あるいは、そのドライさをもって得た、路面をゴリゴリと削り取るようなトラクション能力こそがRSの個性と思えてもいた。

が、新しいRS4アバントとRS6アバントにはそういったトレードオフがおよそ見当たらない。路面から得た情報の中から雑味が綺麗に取り除かれたぶんだけ、その解像度は生々しいものとなっている。

操作系の応答感がソフトタッチになったことは間違いなく、腕っぷしで抑え込むようなドライブフィールが好きなユーザーは物足りなさを感じるかもしれない。だが、上質という項目にフォーカスすれば、大幅に進化を遂げている。ポルシェ911を仮想敵にし続けるかのような猛烈な動力性能をクワトロで安定的に御せるものとし、基準車と変わらぬ居住性や積載力を兼ね備える。

RSシリーズに感じていた、技術で他を圧倒するというアウディの信条は新型にも健在だ。だが、狂気めいた佇まいとは裏腹にその速さの洗練度は格段に高まり、したたかに振る舞えるものになったと言えるだろう。(文:渡辺敏史/写真:永元秀和・井上雅行)

画像: エンジンカバーも金属やカーボン素材を用いており特別感は満点だ。(左:アウディRS6アバント)

エンジンカバーも金属やカーボン素材を用いており特別感は満点だ。(左:アウディRS6アバント)

アウディ RS4 アバント 主要諸元

●全長×全幅×全高:4780×1865×1435mm
●ホイールベース:2825mm
●車両重量:1820kg
●エンジン:V6 DOHCツインターボ
●総排気量:2893cc
●最高出力:331kW(450ps)/5700-6700rpm
●最大トルク:600Nm/1900-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD(クワトロ)
●燃料・タンク容量:プレミアム・58L
●WLTCモード燃費:9.9km/L
●タイヤサイズ:275/30R20
●車両価格(税込):1250万円

アウディ RS6 アバント(エアサスペンション装着車) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4995×1960×1485mm
●ホイールベース:2925mm
●車両重量:2200kg
●エンジン:V8 DOHC ツインターボ
●総排気量:3996cc
●最高出力:441kW(600ps)/6000-6250rpm
●最大トルク:800Nm/2020-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD(クワトロ)
●燃料・タンク容量:プレミアム・73L
●WLTCモード燃費:7.6km/L
●タイヤサイズ:275/35R21*
●車両価格(税込):1764万円
*試乗車にはオプションの22インチアルミホイールを装着。サイズは285/30R22

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