パワートレーンそのものはRS3と同じ。だがコンパクトな2ドアスペシャリティとして凝縮されたディメンションは、さらに軽快で痛快な運動性能を実現している。絶対性能も、確かにスーパースポーツだ。(Motor Magazine2021年3月号より)

身のこなしはあくまで軽快。圧倒的なトラクションが光る

TTのフラッグシップモデルであるTT RSに搭載されているのはRS3と基本的に同じ2.5L直列5気筒エンジン。もちろんRS3同様、アルミブロックの新型に置き換わっている

ギアボックスが7速DCT(Sトロニック)で前後トルク配分にハルデックスを用い、前がマクファーソンストラット、後ろが4リンクのサスペンションを備えていることもすべて共通。しかし、TT RSの運転席に腰掛けた際の印象はRS3とは大きく異なる。

専用サスペンションが与えられたRS3もA3に比べて車高が下げられており、スポーツシートの効果とあいまってドライビングポジションは十分低いのだが、TT RSの運転席に腰掛けた印象はスポーツカーそのもの。ドアを開けて手を伸ばせば路面に指先が触れるのでは思えるほど、低くうずくまった姿勢をとる。まるで小さなR8に乗っているような感覚に自然と心が浮き立ってくる。

そういえば、エンジン始動用の赤いプッシュボタンとドライブモード切り替えをハンドル上で操作できるのも、R8との共通点。TT RSが本格派のスポーツカーであることの証明だ。

画像: 一般公道ではややハーシュネスがキツい足のセッティングだが、サーキットではまさに水を得た魚のごとし。

一般公道ではややハーシュネスがキツい足のセッティングだが、サーキットではまさに水を得た魚のごとし。

5気筒エンジンのフィーリングは、RS3と同様の豪快なもの。低回転域でもアクセルペダルを踏めばグンと背中を押されるような加速感が得られるのも共通だが、TT RSのほうがレスポンスはさらに軽快に感じる。それもそのはず、TT RSの車重は1490kgでRS3より100kg以上も軽い。

本国発表の0→100km/h加速タイムにしてもRS3の4.1秒に対してTT RSはなんと3.7秒。ほとんどスーパースポーツカー並みの速さなのである。

いくらスポーツモデルとはいえ、量産車でサーキットを走ると荷重移動が過大で不安定な姿勢に陥りがちだが、軽く、そして低いボディのTT RSはロールがよく押さえられた安定したスタンスを保つので、4輪がほぼ均等に接地していることが実感できる。4本のタイヤに対して均等に神経が行き渡るように感じるのも、ホイールベースの中心近くに着座するスポーツカーのメリットだ。

こちらもRS3と同様ながら、TT RSはドライビングモードにあわせて前後のトルク配分設定も切り替わり、ダイナミックモードでは50対50に限りなく近づく。このため、4WDといっても前から引っ張られるというよりは後から押し出される感覚が強く、コーナリングは実に軽快。

それでいてコーナーからの脱出では4輪を通じて強大なエンジントルクを無駄なく路面へと伝達され、同クラスの2輪駆動モデルを軽々と置き去りにするダッシュを披露してくれる。

TTは3代目になってスタイリッシュなスポーティカーから本格的なスポーツカーに生まれ変わったというのが私の印象。さながら最新のTT RSは「ミニR8」と言えるだろう。(文:大谷達也/写真:井上雅行)

画像: クランクケースのアルミ素材化や大容量ターボチャージャーの採用などによって、2.5Lで400psを発生する。

クランクケースのアルミ素材化や大容量ターボチャージャーの採用などによって、2.5Lで400psを発生する。

アウディTT RSクーペ主要諸元

●全長×全幅×全高:4200×1830×1370mm
●ホイールベース:2505mm
●車両重量:1490kg
●エンジン:直5 DOHCターボ
●総排気量:2480cc
●最高出力:294kW(400ps)/5850-7000rpm
●最大トルク:480Nm/1700-5850rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・55L
●WLTCモード燃費:-
●タイヤサイズ:245/35R19
●車両価格(税込):1026万円

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