カイエンGTSと比べてもX6の走りへの取り組みは別次元
こうしたサスチューニングとは別の次元で、SUVの運動性能に取り組んでいるのがX6だ。先に解説したDPCである。
旋回中、外側の後輪により多くのトルクを配分し、積極的にヨーモーメントを作り出すのがこのシステム。その効能は明らかで、かなりハイペースのコーナリングでもアンダーステアをほとんど感じることなく、狙ったラインをピタリとトレースする。2.3トンの質量をほとんど感じさせない軽快さは驚異的だ。そして、それが違和感になっていないのもうまい。他の左右輪トルクコントロールでは、アクセルを踏むほど内側に切れ込むような、今までの経験則にない動きを感じることもあるが、X6のDPCはどう扱ってもオンザレールの感覚に終始するのである。
さらにこのクルマのマルチインフォメーションには、実にわかりやすいトルク配分を示すバーグラフが設けられ、コーナーの曲率や速度、アクセルのオンオフによって後輪の左右にかかるトルクの違いがわかるようになっている。もちろん左旋回の場合は右後輪のトルク配分が増えるのだ。こうして視覚的に新システムの効能を楽しめるのはいい。
こんなに高い位置にあるラゲッジルームにどうやって荷物を積むのだとか、2名分のリアシートは傾斜したルーフラインのせいでヘッドクリアランスがギリギリとか、実用面ではいろいろ指摘できるX6だが、それもSACという新しい方向性ゆえのこと。ともかくこのクルマは、走りにおいても、そしてパッケージに関しても、これまでにないSUVを作るべくチャレンジした意欲作だ。そして近い将来、大きく空いた荷室床下のスペースにハイブリッド用のバッテリーなりキャパシタが積まれれば、より面白いと思う。
在来工法ながら運動性能を高めたカイエンGTSと共に行った今回の試乗は実に楽しかった。この2台にはSUVの今、そして将来が凝縮されている。(文:石川芳雄/写真:村西一海)
BMW X6 xDrive50i 主要諸元
●全長×全幅×全高:4885×1985×1690mm
●ホイールベース:2935mm
●車両重量:2330kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:4394cc
●最高出力:300kW(407ps)/5500rpm
●最大トルク:600Nm/1750-4500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・85L
●10・15モード燃費:6.3km/L
●タイヤサイズ:前255/50R19、後285/45R19
●車両価格(税込):1070万円(2008年当時)
ポルシェカイエンGTS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4795×1955×1675mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:2300kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4806cc
●最高出力:298kW(405ps)/6500rpm
●最大トルク:500Nm/3500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・100L
●10・15モード燃費:−km/L
●タイヤサイズ:295/35R21
●車両価格(税込):1020万円(2008年当時)