自分の針路は自分で決める。そう考えていても、ためらうことはあるだろう。しかし、巡ってきたチャンスをつかむためには自らの意思で決断することが重要だ。興味を覚えたなら、手を伸ばしてみる。自分の気持ちに素直になってみてはどうだろう。ここではポルシェ 911ターボSカブリオレとアルピーヌ A110Sの試乗を行った。(Motor Magazine2021年4月号より)

常に世の中を先導する高い商品性を備えたポルシェ 911

しかもその911は、オープンエアモータリングを堪能できるという付加価値までもが上乗せされた「ターボSのカブリオレ版」なる、911シリーズの頂点に立つモデルでもあった。

1964年に初代モデルが誕生して以来、半世紀を超える時を生き抜いてきたポルシェ911。「継続は力なり」という言葉にも示されるように、そうした特筆すべき歴史の長さもさることながら、このモデルの場合とくに見逃せないのは、常に刷新の手を緩めずに、いつでも「最新のスポーツカー」として世の中を先導できる走りの実力と、高い商品性をキープし続けて来た点である。

趣味性が強い、というキャラクターゆえに多くの販売台数を維持し続けることが難しく、ともすればリファインの手が緩みがちにされてしまうのが世のスポーツカーが直面する課題。それにもかかわらず、名だたるモーターショーのたびに新たなトピックスを備えたニューバージョンが提案され、だからこそ常に「羨望の最新スポーツカー」としての立ち位置をキープし続けてきたのが、この911というモデルであるのだ。

だからこそ固有のブランド力の構築に成功し、多くの人にとっての「気になるクルマ」になることができたのだと、911の場合はそのように受け取れる。

ボディ後端の低い位置にエンジンをマウントすることに起因する独特の「猫背」プロポーションに加えて、フロントフェンダー前端の高い位置にヘッドライトを置くことによる、世代をまたいでも変わらない表情。

その一方で、カブリオレとタルガという複数のオープンエアボディの設定や、一度は消滅しながら後に復活したGT3系へのMT仕様設定など、顧客の声を敏感に反映させる。こうした「変わる部分」と「変わらない部分」が巧みにバランスされているのも実は911ならではの特徴だ。

650psというとてつもないパワーを発するパワートレーンをフルオープンの、それも4WDシャシに組み合わせたターボSカブリオレは、言うなれば911シリーズの中にあっても「全部載せ」と言える内容の持ち主である。RRレイアウトをベースに4WD化されたシャシが実現しているトラクション能力はまさに比類なく高い水準にあり、アクセルペダルを深く踏み込むと、比喩ではなく実際に「ステアリングが軽くなる」ことを実感させられる。

その、まるでウイリーするかの如く加速していく様子には、常人であれば恐怖感から、ほんの1秒たりともアクセル全開状態をキープすることは難しいはずだ。こうした「常識外れ」とも言える印象は際立つボディ剛性感についても同様で、ルーフを閉じているとフルオープン構造の持ち主であることをつい忘れてしまう。

またスイッチひとつで展開と収納を自在に行えるウインドディフレクターも、その機能は完璧過ぎるほど。これを展開してすべてのサイドウインドウを上げておけば、高速道路を走行していても風の巻き込みが気にならないのだ。

ちなみに、リアエンジン車は直進性に劣るなどというフレーズはもはや「都市伝説」である。ことほどさように、どこをとっても一点の突っ込みどころも見せない鉄壁の構えを備えているのが最新の911ターボSカブリオレというモデルの実力なのだ。

そんなパーフェクトな仕上がりを備えたモデルが、多くの人にとって「一度は乗ってみたい気になるクルマ」であることには、すんなり過ぎるほどにすんなりと納得がいく。むしろ、現代の自動車技術の集大成とも言えるようなこうしたモデルを、「乗ってみたいと思わない」「気にならない」という人がいるとしたら、そうした意見を持つ方にこそお目にかかってみたいものだ。

画像: GTスポーツステアリングホイール装着。ボルドーレッドとブラックレザーの2色内装。(ポルシェ911ターボSカブリオレ)

GTスポーツステアリングホイール装着。ボルドーレッドとブラックレザーの2色内装。(ポルシェ911ターボSカブリオレ)

This article is a sponsored article by
''.