2008年、6代目ゴルフが大きな注目を集める中で登場した。そのコンセプトは従来の延長線上にあるものだったが、果たしてその中身はどう進化していたのか。ここではアイスランドの首都レイキャビク周辺を舞台に行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年12月号より)

静かさの大きな進化、そして軽量化への執念

アイスランドの首都、レイキャビクのホテルから試乗会は始まった。駐車場にズラリと並ぶゴルフVI。初対面の印象は「写真で見るよりも、はるかにシャープなデザインだな」というもの。

ゴルフVは、そのデビューから現在までリアルタイムで接してきて、デザインだけでなくメカニズムや走り味などその全体に関して、個人的にも気に入っている。それでも、新しいゴルフVIを見て「あ、いいな」と感じたのだ。

そして走り出してみて「おっ、これはいいね」と、好印象が強まり、さらにすべての試乗を終えた後では「これは、凄いな」という感想を抱かざるを得なかった。

では、何がそう感じさせてくれたのだろうか。

用意されていたゴルフVIは3種類。搭載するパワートレーンごとにボディカラーが分けられていた。

ライトブルーメタリックのモデルが160psの1.4TSIツインチャージャー、グレイメタリックカラーが122psの1.4TSIシングルチャージャー、シルバーボディが140psの2.0TDI(ディーゼル)。組み合わされるトランスミッションは、ガソリン2車が乾式の7速DSGで、ディーゼルは湿式の6速DSGとなる。

そしてすべての試乗車には、新しくオプション設定された電子制御ダンパーシステムのアダプティブシャシコントロール「DCC(ダイナミックシャシコントロール)」が装着され、さらにシートは、耐久性を向上させて色移りなどの不具合もなくすよう改善された本革素材を用いたレザー仕様(オプション)と、ゴルフVIのトップグレードといえる装備内容が奢られていた。

最初に乗り込んだのは1.4TSIツインチャージャーの160ps仕様。シートポジションを合わせる。着座感はゴルフVとそれほど違わないようだが、でも違う。前方の視界がスッキリと明るくなった印象。メーターパネルのデザインが一新されて、メーターが左右で独立したものになり、ディスプレイが白文字になるなど、アウディ的ともいえる上級感を漂わせている。

ドアトリムのデザインもゴルフVとはまったく違う。パワーウインドウとドアミラーの操作スイッチがハンドルから近い位置へ移動したので、運転中でも操作しやすくなった。

Dレンジで走り出す。アクセルペダルを踏んだ時、そして離した時のスムーズなクルマの動きは、最新の7速DSGならではだ。日本では170ps仕様のツインチャージャーに6速DSGを組み合わせるゴルフヴァリアントTSIコンフォートラインに乗る機会が多く、熟成度の違いに感心させられる。160ps仕様と7速DSGの組み合わせは初めてだが、この滑らかさはいい。それでいて踏めばすぐにスーパーチャージャーによる過給で加速してくれるから、ストレスもない。

街中で、アクセルペダルの踏力を抜いてコースティングさせてみる。TSIとDSGの組み合わせは、燃費のためにできるだけ高いギアを選ぶプログラムなので、エンジンブレーキの効果はほとんどかからない。だが、驚いた。この時に、まったくガクガクしないで本当にスーッと転がっていくのだ。

これまでDSG車へ乗る度に同じことを試してきた。6速DSGも7速DSGも、新しいモデルほどその洗練度が高まっていたものの、ゴルフVではわずかにブルッとした感触が残っていた。それが、このゴルフVIではほとんど感じられない。このあたりは、日常的にDSGを乗っているので感じられた、けっこう大きな進化ぶりだ。

それにしても静かだ。まるでスーパーチャージャーが装着されていないみたいだし、ゴルフVでは感じられた若干のフロア振動も、ボディ構造のウイークポイントを徹底的に強化した効果によってほぼ抑え込まれている。

これは、このクラスのモデルとして初めて遮音効果の高いフイルムを中間に挟んだフロントウインドウガラスの採用、さらに前席サイドウインドウの厚みをこれまでよりも1割増しとしただけでなく、ドアやガラスのシール形状変更による遮音性の向上、各所への遮音材の設置、ドアミラー形状改良、エアコンのブロワーファンの音を下げるための空調構造の設計見直しなどの徹底した静粛性追求の効果だ。それでいて遮音素材の見直しや新開発などにより、ゴルフVの同装備と比較してわずか1kgの重量増に抑えたという。

画像: 遮るもののない広漠な溶岩台地の上のワインディングロードを走る6代目ゴルフ。写真は1.4TSIツインチャージャー。

遮るもののない広漠な溶岩台地の上のワインディングロードを走る6代目ゴルフ。写真は1.4TSIツインチャージャー。

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