2008年、6代目ゴルフが大きな注目を集める中で登場した。そのコンセプトは従来の延長線上にあるものだったが、果たしてその中身はどう進化していたのか。ここではアイスランドの首都レイキャビク周辺を舞台に行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年12月号より)

DCCでさらに可能性を広げたダイナミクス性能

レイキャビク市内でも信号の数は少なかったが、中心部を抜けると多くの交差点がラウンドアバウトとなり、信号は姿を消す。流れに合わせて車速を上げてみる。シフトはDレンジのまま。

なるほど、発進加速の瞬間的な力強い反応は170ps仕様+6速DSGには及ばない。1速でスタートしてすぐ2速、グッと踏み込んでいても力強い加速の感覚が身体に伝わってくるのは3速から4速という感じだ。これが170ps+6速DSGだと、スタート時のショックはあるが2速でグーッと力強さをアピールしてくる。とはいえ、それでも十分に力強いことは確かだ。

また新しい160ps仕様のTSIはエンジンの最高回転数が170ps仕様より下げられた。170ps仕様は7000rpmからレッドゾーンで、実際にここまできれいに回ってくれる。だが160ps仕様は6000rpmからレッドゾーン。ただしフル加速時には6500rpmでシフトアップしていく。しかし0→100km/h加速が8.0秒、最高速度220km/hという性能に不満はない。100km/h走行時のエンジン回転数は、7速でちょうど2000rpmだ。

溶岩台地の上の国道を走り、ちょっとしたワインディング路へと入る。相変わらず乗り心地は気持ちいい。すでにその前から感じていたが、ここではダイナミクス性能の向上ぶりを確かに実感した。ゴルフVもダイナミクス性能は高いと感じていたが、それがよりスマートに向上されている。

具体的には、コーナーへ入る際のフロントの向きの変わり方がハンドルの操作(この感触がしっとりとしているのもいい)に合わせて「スッ」という具合に、非常に素直に気持ちよく曲がり始めてくれる。重心が下がったかのような安定感を覚える。これがゴルフVだと、ハンドルを操作してボディが少しグラッとしてから「グッ」とノーズが曲がっていく感じだ。

ボディ剛性のさらなる強化や軽量化など、さまざまな進化が盛り込まれたゴルフVIは、サスペンションの動きもよりスムーズになった印象だ。

これはもちろん、オプション装備のDCCの効果が大きいだろう。モンロー製の可変ダンパーとシーメンス製のコントロールユニットを備えたDCCは、ノーマルサスペンションと比較してスプリング自体の設定は柔らかめで、車高も10mm低められている。選べるモードはノーマルと、コンフォート、スポーツの3パターンだ。

試乗コースを走った限りでは、ノーマルモードが最適だと感じられた。スポーツモードを選ぶと確かにビシッとシャープな乗り味にはなるが、同時に細かい衝撃も突き上げてくる。コンフォートでは柔らかな乗り心地に優れるが、速度を上げていくとボディの動きがちょっと大きい。設定の硬軟をどちらも選ばない状態、つまりノーマルモードにしておくと、走行状態に応じて常に設定を可変してくれる。そのセットアップ具合がとても気持ちいい状態だと感じられた。

122ps仕様の1.4TSIシングルチャージャーでもその好印象は変わらない。スーパーチャージャーを備えていないおかげで、フロントの軽快感はこちらの方が上だし、静粛性もさらに優れている。走れば、その軽快さが強く印象づけられる。S字状の部分をクリアする際でも、いやな揺り返しなどはなく実にスムーズだ。

ただしエンジンは、低回転での力強さでツインチャージャーに一歩譲る。ツインチャージャーの感覚で走らせてしまうと、期待ほどの反応が得られずに「あれ?」という感覚になる。登りのワインディング路などでは、とくにその違いを意識させられた。

もちろんこれは、ツインチャージャーの立場からシングルチャージャーを見てのものだから、当然の反応ではある。

その意味で素晴らしいと感じたのが、140ps仕様の2.0TDIだ。最新ディーゼルらしく、低回転から実にたっぷりとしたトルクをスムーズに供給してくれるだけでなく、各ギアの守備範囲が広く、変速ぶりがせわしくない6速DSGならではの「余裕を感じさせながらも力強い」という走り味は秀逸だと思わされた。しかも静粛性にも富む。将来的には、より高性能な170ps仕様の2.0TDIの投入も予定されており、そちらのパフォーマンスはさぞかし痛快なものとなるに違いない。

画像: 高張力鋼板や超高張力鋼板の採用など大幅な見直しが図られ、かつてないほど静粛性と走行安定性に優れたゴルフが実現した。

高張力鋼板や超高張力鋼板の採用など大幅な見直しが図られ、かつてないほど静粛性と走行安定性に優れたゴルフが実現した。

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