V60 B4の499万円という車両価格は驚きである
今回、俎上に載せたベーシックグレードの1台目はV60 B4モメンタム。ボルボの主軸ワゴンであるV60は2020年秋のアップデートで全モデルが電動化され、ベーシックグレードのB4にも48Vマイルドハイブリッドシステムが装備された。
もともと197ps/300Nmとパワフルな2Lガソリンターボエンジンにハイブリッドが組み合わされたのだから走りが力強いのは当然だろうが、そんな実力派ワゴンが499万円で手に入るのだからコストパフォーマンスは驚くほど高い。ちなみに試乗車は60万7000円のオプション付きだが、これを加えても559万7000円という魅力的な価格設定となっている。
新世代ボルボの象徴であるプラットフォーム「SPA」は、導入当初はしなやかさがやや足りなかった乗り心地と大入力が加わった時に微振動が残るところが弱点だったが、V60はデビュー当時からそうした点に改良のあとが見られたほか、最近の年次改良などで足まわりは一層のしなやかさを手に入れた。もはや、その乗り心地に注文をつけたくなるところは、ほぼ残っていない。
滑らかにストロークするサスペンションのおかげでワインディングロードでの安定感も上々。ロールが小さく抑えられている点も安心感に結びついている。しなやかな乗り心地は高速道路でも変わらず、ハイウエイクルージングは得意科目といっていいだろう。
エンジンは、低回転域でモーターのサポートが入るのでレスポンスは良好だし、トップエンドまできれいに吹き上がる。ベルト駆動のスターターモーターを備えているためにアイドリングストップ後の再始動も滑らかで好ましい。
こうなってくるとトーマス・インゲンラート氏がデザインした内外装がますます魅力的に見えてくる。ブロンドと呼ばれるホワイト系のインテリアは明るく、まるでしゃれたホテルのロビーにいるような気分を味わえる。
ADASに関していえばアクティブレーンキーピングの操舵にもう少し滑らかさが欲しいが、これを除けばパワートレーン、シャシ、デザインとも不満らしい不満はない。デビューからわずか3年でV60は熟成の領域に入ったようだ。
318iのパフォーマンスに不満を感じることはない
一方のBMW318iは、モデル名より実際のエンジン排気量の方が大きいという最近では希有な存在。こちらはハイブリッドが与えられておらず、2Lガソリンターボエンジンは156psと250NmでV60 B4に一歩及ばない。エンジンのパフォーマンスでBMWがボルボに負けるとは、往年のバイエルンファンには受け入れがたいことかもしれない。318iツーリングの車両価格は523万円でV60に近いが、試乗車は165万円のオプションを装備し、合計で688万円と「いい」お値段となっている。
まずは市街地を走り始める。ランフラットタイヤの影響もあって、目地段差を乗り越えるたびにゴツンというショックが伝わってくるのは残念。また、路面のうねり具合によってはボディの上下動が1回では収まらなかったり、ボディが前後でシーソーのように動くピッチングも感じられたりしてあまり褒められない。
もっとも、高速道路で100km/h前後に達すると俄然ハーシュネスが改善され、フラット感も高まる。さすがドイツ車、さすがBMWである。ちょっと厳しいことも指摘したが、ボディや足まわりの剛性感が高く、振動は伝わってきてもダンピングが良好で安っぽさを感じさせない点は高く評価したい。
エンジンは低速域からトルク感があるし、フィーリングも滑らか。「電気パワー」のアシストがあるV60ほどの力強さはないけれど、ハイウエイからワインディングロードまでパフォーマンスが物足りないと感じたことは1度もなかった。その点、かつての318iとは大違いである。
エクステリアデザインは、テールライトが薄型化されるなどして未来感は強まったが、BMWらしい端正な佇まいはそのまま。インテリアも安っぽさはないが、正直、デザイン性は高くなく、オシャレ感ではV60に遠く及ばない。
一方、アクティブレーンキーピングは常にスムーズにハンドルを切ってくれるほか、3眼カメラが遠く離れた前走車もしっかり認識しているらしく、アダプティブクルージングによる加減速も滑らかで安心感は強かった。この点はV60に対する明確なアドバンテージと言えるだろう。