小改良にとどまるのは、もとの完成度が高い証拠
MINIはフルモデルチェンジしても、どこが変わったのかマニアにしかわからないのでは?と思うくらい、歴代モデルの「パッと見の違い」がわかりにくい。しかし今回は、リアコンビランプがユニオンジャック柄となったから、後ろから見れば誰もがすぐにわかるハズだ。
内装も、オプションのマルチディスプレイメーターが装着されていれば変わったことは一目瞭然。しかし、そのほかはルームミラーやナビゲーション選択時のダイヤルスイッチの形状変更、USBジャックの増設くらいの変化となり、とくにPHEVモデルは、他グレードでは変わったシフトノブも変わらなかったので、やはりパッと見ただけでは変化に気づくのは難しい。というように、マイナーチェンジ前のモデルのオーナーが羨むほどの変化はない。
でもそれは、登場した時からとても良くできていたからという証でもある。実際にこのクラスのライバルと比べると、リアシートがスライドする、ラゲッジルームにアンダーボックスがある、バックドアをキッキングモーションで開閉できるなど、機能的かつ実用的な装備が実はあれもそれもこれも付いてる。こういう具合に、このクラスのSUVの中でとくに充実度が高いのがMINIクロスオーバーだったりする。
まぁ、どれだけ悪路を走ったかをカウントするメーターとか、光の色を変えることでクルマと対話している気分になれる機能など、クルマを走らせる上では必要のない機能まで付いているし、ラゲッジルームの保護カバーを兼ねたベンチなんていう、他のクルマでは見たことのないものまでオプションで用意していたりするが、こういったところこそがMINIの真骨頂。このクルマでトコトン遊んで欲しいという、作り手の思いが伝わってきて、もはやクルマという乗り物の枠を超えて、ペットのような存在にさえ思えるようになってくるのだ。
ところが、そういうおふざけを盛り込みつつ、大真面目にちゃんと走るのがMINI。とくにこのPHEVモデルは10kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーの重量を、上質な重厚感に転化させているようだ。同時に重心高も下がるので、高すぎない全高(ルーフレールを外したら1550mmくらいしかないはず)と相まって、MINIの代名詞ともなっている、地面を這うようなオンザレール感覚やゴーカートフィーリングのコーナリングを具現化している。とはいえ、ほかのMINIシリーズに比べると最低地上高も高めなので、足まわりのストローク感を感じることもでき、普段使いに対応する乗り心地の良さも十二分に保っているのは巧い。
さらに、PHEVモデルならではの、アクセルペダルを踏んだ時のダイレクト感がまた良い。ディーゼルエンジンモデルのトルクの太さも捨てがたいのだが、特に再加速時などのレスポンスの良さは「さすがはモーター!」という感じでタイムラグがなく、クルマとの一体感が高まるのだ。そう、MINIクロスオーバーは、カワイイ顔してかなり無敵のヤツなのである。でも! 顔だけならコイツもかなりイカしている。それがフィアット パンダ クロス4×4だ。