刺激的な走りを味わえる輸入車を500万円以下で・・・、ここで紹介するスポーツハッチバックなら、そんな願いが叶えられる。それでいて使い勝手がいいというオマケ付き。頼もしい相棒になるに違いない。ここではフォルクスワーゲン ゴルフGTI×MINIクーパーSクラブマンを乗り比べてみた。

輸入車ハッチバックに多いアンダー500万円の魅力なモデル

基本は「デイリーユースに打ってつけ」という適性の持ち主でありながら、時にサーキット走行も問題なくこなすスポーツ性まで備え、さらに日本の環境でも持て余すことのない「適度なサイズ」で仕上げられたモデル。実は、400〜500万円というポジションに身を置く輸入車には、そんな多彩で魅力溢れるキャラクターを秘めたモデルが少なくない。

その多くに共通する特徴は、それがハッチバックボディの持ち主であるということ。そもそも、限られた全長の中に高いユーティリティ性を両立させるという合理的な発想に基づいて生み出されたのが、ランニングコンポーネンツをフロントに集約させ、居住空間を最大限に確保できるFFレイアウトを採用するハッチバックモデルたち。

そんな本来の狙いどころから一歩踏み出し、搭載エンジンを必要十二分以上のパワーを発する強心臓へと置き換えた上で、ボディやシャシにもそれに見合ったチューニングを施して完成されたのが、実用性のみならず高い趣味性にまで踏み込んだ、ここに紹介する「オールマイティで器用な輸入車たち」である。

具体例を挙げるとすれば、ルノーのメガーヌR.S.やMINI(3ドア)のジョンクーパーワークスなどが、500万円という予算内に収まるものの一例。さらにその発展型として、よりハイチューンが施されたエンジンと4WDとを組み合わせたメルセデスAMGのA45S 4マティック+、BMWのM135i xDRIVE、フォルクスワーゲンのゴルフRといった「規格外」のモデルの姿も思い浮かぶが、これらは500万円に収まらないので今回は除外する。

画像: ゴルフGTIパフォーマンス(左)/483万9000円、MINIクーパーSクラブマン:435万円。

ゴルフGTIパフォーマンス(左)/483万9000円、MINIクーパーSクラブマン:435万円。

GTIパフォーマンスは速さと快適性を見事にバランスする

かくして、百戦錬磨のモデルが名を連ねる「アンダー500万円で選べる、スポーツ性にも富んだハッチバックモデル」たち。それでも、多くの人の脳裏にまず思い浮かぶことになるのは、やはりフォルクスワーゲンのゴルフのバリエーションだろう。

欧州ではすでに新世代モデルへのバトンタッチが行われたゴルフは、受注が開始された日本でもその上陸が秒読み段階。ただし、現在のところ店頭に並ぶのは2012年に7代目となった通称「ゴルフVII」。そのスターティングプライスは323万円だが、500万円というポイントにまで予算を広げることができるならば、走りに磨きを掛けた「特別なゴルフ」にも手が届くことになる。

今回の取材車「GTIパフォーマンス」は、2017年10月に500台の限定で日本に導入され、好評のうちに完売したという同名モデルのリメイク版。すでにひとつのブランドにもなった「GTI」の名が与えられたゴルフをベースにさらに専用チューニングが施され、最高出力が15ps増しとされた2Lのターボ付き4気筒ガソリンエンジンを搭載。最大トルク値は350Nmから370Nmへと高められた。組み合わされるトランスミッションも6速DCTから7速DCTへと改められた上で、電子制御式のディファレンシャルロックシステムや大径ブレーキが採用されるなど、ベースのGTIとの相違点は少なくない。

画像: 痛快な走りが魅力のゴルフGTIパフォーマンス。

痛快な走りが魅力のゴルフGTIパフォーマンス。

それでも、日常の使い勝手や快適性、さらにはラゲッジルームの積載能力などは、ベーシックなゴルフと同様の実用性をキープ。その上で、イザというシーンになるとそれとは比較にならないスピード性能を発揮するのが「このモデルならでは」のキャラクター。

標準装備された電子制御式の可変減衰力ダンパー「DCC」をコンフォートモードに設定すると、スポーツモデルらしからぬ優しい乗り味を提供してくれる一方で、そのセッティングをノーマル、あるいはスポーツモードへと変更すると「ボディの動き量がちょっと大きいかな」というそれまでの印象がスッと消え、瞬時に引き締まった乗り味へと変化する。

それでも「やっぱりゴルフの一員」と思えるのは、常に4輪が「地に着いた」感覚が得られること。逆に「さしものゴルフでもそろそろ限界か」と感じられたのはトラクションの能力で、スタート直後からのフルアクセルのシーンでは、トラクションコントロールの作動を示す黄色いワーニングランプが激しく点滅を続け、前輪駆動の限界を意識させられる。よりハードコアなモデルである「ゴルフR」の存在価値を改めて思い知らされる一瞬だ。

一方、今度は「それでもゴルフ」と感心を新たにするのは、そうした限界領域にまで至っても、トルクステアやハンドルの固着感など、フィーリングが目立った変化を示さないこと。加えて言えば、最高出力と最大トルクが200ps/320Nmに抑えられる弟分のポロGTIとは、やはり絶対的なスピード性能で明確な差が存在。兄貴分としての威厳は、しっかりと守られていることも教えられるのだ。

こうして、いかにも理詰めに組立てられた走りのテイストが、いかにも優等生的であると同時にさしたる刺激性を伴わないゆえ、際立つスピード性能の持ち主でありながら「サーキットの香り」をほとんど意識させられないのもこのモデルならではだ。逆に、FFレイアウトの持ち主ながら、タイトなターンでもガンガンと切り込んで行きたくなるメガーヌR. S.などは、サーキットの香りがぷんぷんに漂うという典型例。ゴルフの好敵手という印象だ。

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