8世代目となったポルシェ911シリーズ。その中でも特別な存在のタルガ、さらにフラッグシップのターボとコンパクトな718ケイマンの高性能モデルの3つの魅力を探る。(Motor Magazine2021年7月号より)
911の頂点として存在するのが「ターボ」
そんなタルガから乗り換えると、「やっぱりこれこそが、911のひとつの頂点だな」と、思わず唸らされてしまうのが『ターボ』である。
ポルシェにとって、このネーミングは特定のメカニズムではなく、シリーズ中でもとくに際立って高いポテンシャルの持ち主を指し示すというのはご存じのとおり。1974年に発表された初代モデルが当時としては圧倒的な高性能ぶりで人々を驚嘆させた。それ以降、際立つ走りの能力がカリスマ視され、結果として人々を羨望させるブランド力に至ったのが『ターボ』の名称でもあるわけだ。
911のベーシックなモデル、すなわちカレラシリーズにもターボチャージャーが与えられるようになって久しいが、「これは別格」という思いは、このモデルに乗りアクセルペダルを深く踏み込んだ人であれば即座に感じる事柄であるはず。
なにしろ、フル加速シーンでは(決して比喩ではなく!)ハンドルの感触が明確に軽くなることを実感させられる。そもそもが後ろ寄りという重量配分に加え、怒涛のパワーが強烈なトラクションを生み出すことで後方への強い荷重移動が発生。結果、前輪荷重が減少する「ウイリー」のような状態が生まれ、恐怖心すら伴う、そんな稀有な印象を感じさせられるのだ。
一方、そんな怒涛の加速力を生み出す大容量のターボチャージャー付きエンジンでありながら、それによる神経質さなどおくびにも出さない、日常シーンでのすこぶる軽快な蹴りだし感も印象的だ。
なるほど、シリーズ中にあってもやはり「王者の貫禄」を十分に味わえる特別なバリエーション、それが『ターボ』の名が冠された911なのである。