フライングスパーにも加わったV8搭載モデルを試す
ベントレーではV8エンジンが主役になりつつあるらしい。ベンテイガはすでに80%がV8で、従来W12が主流だったコンチネンタルGTも、2021年は60%強までV8比率が高まっているという。
その理由は、V8ならではの軽快な走り、長い航続距離、そしてCO2排出量がW12に比べて20%近くも少ないことにあるようだ。これは「V8のほうが燃費が20%近く優れている」という意味でもあるのだが、環境意識が高い多くのベントレーユーザーは、燃費性能よりCO2排出量を重視してV8モデルを選んでいると考えたほうがしっくりとくる。というわけで、発売から間もなく2年になるフライングスパーにもV8モデルが追加された。
その走りは軽快そのもの。まず、ベントレーの他のV8モデル同様、エンジンのレスポンスが良好で、アクセルペダルを踏み込むとかすかな遅れも感じさせることなく、トルクがすっと立ち上がる。そこからさらにアクセルペダルを踏み込んでいくとパワーは一直線に高まっていくので、スピードコントロールは簡単そのもの。
しかも、その気になれば、たとえば高速道路などでは、周囲のクルマが止まったのではないかと思えるほど俊敏な加速を披露してくれる。最高出力550ps、最大トルク770Nmのスペックは伊達ではない。
たしかに、W12エンジンのような爆発的な加速感は得られないかもしれない。ただし、いったんパワーバンドに入ると奔流のごとき大トルクがあふれ出すWに比べると、パワー感がリニアに上昇していくV8ははるかに扱いやすく、ハンドルを握っていて緊張を強いられずに済む。また回転の滑らかさや静粛性といった部分でもWとの差はほとんど感じられない。燃費が良好なため、1回の満タンで走れる距離が長いこともV8モデルの明確なメリットだ。
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ベントレー フライングスパー V8。走りも楽しめるのがベントレーの真骨頂。