e-POWER専用車となる現行型3代目 日産ノートは、発表が2020年11月24日、発売が同年12月23日だった。発売開始から半年が経過し、プレミアムバージョンの日産 ノートオーラも追加発表されたが、登録台数はいかがなものだろうか。

上に挙げた要素をそれぞれ見ていこう

■e-POWER専用車になった

日産ノートは車格的に欧州ではBセグメントと呼ばれる小型車で、日本では軽自動車(Aセグメント)のすぐ上のクラスに相当する。新型はアライアンスのコモンプラットフォームであるCMF-Bを採用し、ルノー ルーテシアとプラットフォームを共有する兄弟車となった。筆者も試乗したが、硬めながらもよく動くサスペンション、車格以上のしっかりとした軽量ボディ、e-POWERの十二分なパワーで、タウンコミューターとしてはスポーティで良い出来だと感じた。

クルマとしては良い商品なのだが、トヨタ ヤリスやホンダフィットのライバルとされるセグメントでありながら、最廉価グレードで200万円オーバーは高い。高価なプライシングの原因は間違いなくe-POWER専用車となったことだ。Bセグメント車は日本で登録車のエントリーモデルなのだから、200万円以下の廉価グレードを設定してあってもいい。

安価な価格を実現するのにわかりやすいのは、ハイブリッドパワートレーンではなくエンジン駆動モデルを設定することだ。モデルバリエーションが増え、グレード選択の楽しみを提供、登録台数増加にもつながる。しかし、そこで問題となるのがCAFE(企業別平均燃費基準)だ。世界がカーボンフリー社会に大きく舵を切っている中、量販車種に自然吸気エンジン搭載モデルの追加は難しいのかもしれない。

画像: 日産 ノートの室内は、5ナンバーサイズだが横方向の狭さを感じず、十分な空間が得られている。

日産 ノートの室内は、5ナンバーサイズだが横方向の狭さを感じず、十分な空間が得られている。

■世界的な半導体部品の供給不足

日産に限らず、多くの自動車メーカーの頭を悩ませているのが半導体部品の不足だ。これが生産台数に影響し、新型ノートの登録台数が伸びない原因になっている可能性もある。世界がカーボンフリー社会を目指し自動車業界では電動化へと向かう今、自動車には多くの半導体部品が使用される。

半導体部品の働きを大雑把にいえば、トランスミッションやブレーキなど「動き」のある部品を制御する役割で、単純なCPUと言っていい。従来からあらゆる部品に半導体部品が使用されきたが、近年はさらに電動化やインフォテインメント、コネクティッド、自動運転などを搭載し、半導体部品の需要は高まる一方だ。コロナ渦より前はであれば供給は十分だったが、2019年末から一転して供給が間に合わなくなっている。

日本で使用される半導体部品はほぼ海外製だ。2021年6月4日には供給状況改善のため、経済産業省は半導体部品製造工場の誘致を含む半導体戦略を発表したが、その実現は何年後になることか。コロナ禍の終焉か、国産半導体部品の供給開始を待たなければ、日産ノートの登録台数2代目以上に増えないのかもしれない。

半導体部品不足に関して余談だが、2021年6月21日に3代目 日産ノートのプレミアムバージョンである日産 ノートオーラが発表された。これは2021年3月の発表予定だったが、半導体部品不足により製造の目途がたたなかったようだ。供給改善が見込まれると踏んで3カ月遅れの発表となった。ただし、2021年7月現在も半導体部品の供給は改善されておらず、発売は3カ月遅れの9月を予定している。今後の半導体部品の供給状況によってはさらなる遅れも想定される。

もうひとつ余談だが、2021年6月には新型日産 エクストレイルが発表予定だったが、こちらも遅れて9月以降の発表に変更されている。日産としては2021年度内に発表したいようだが、実現するかは半導体部品の供給状況にかかっている。

画像: FF、4WDモデルともにオーテックバージョンが設定される。専用の内外装をまとったシックなスポーティー仕様だ。ノートオーラのようなディメンション変更はない。

FF、4WDモデルともにオーテックバージョンが設定される。専用の内外装をまとったシックなスポーティー仕様だ。ノートオーラのようなディメンション変更はない。

3代目 日産ノートの今後の販売について、クラス唯一のe-POWER搭載車であることや自動車として基本的な品質が良いことから、そう大きく落ち込むことはなく、7000台はコンスタントに販売されると考える。逆に9月以降にノートオーラが発売されても、ノートシリーズの販売に大きく貢献することもないと考える。というのも、ノートの上級グレードをフルオプションで購入するよりノートオーラを購入する方が割安感があり、シリーズ内で顧客が流れると考えられるからだ。

3代目 日産ノートの登録台数を伸ばすには、ハイブリッド機構を取り払った自然吸気エンジン搭載車を廉価で販売するのが近道なのかもしれない。(文:猪俣義久)

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