始動時の振動を低減してくれる効果も
新型A3の最大の注目ポイントは、ベルト式スタータージェネレーター(BSG)と48Vリチウムイオンバッテリーを備えるマイルドハイブリッドシステム(MHEV)の採用である。1Lエンジンと48Vハイブリッドシステムの組み合わせはとても興味深く、その完成度が気になっていたが、結論から言ってしまえば、その効果は絶大だと実感できた試乗だった。
今回試乗したのは、A3の日本導入記念特別仕様車1stエディション(セダンは限定125台)。セダンの30TFSIアドバンスド(価格365万円)をベースに、コンビニエンス&アシスタンスパッケージ(アドバンストキーシステム/リアビューカメラ/アダプティブクルーズコントロール/アクティブレーンアシストなど)、ナビゲーションパッケージ(MMIナビゲーション/バーチャルコックピット)、テクノロジーパッケージ(スマートフォンインターフェイス/ワイヤレスチャージング/リアシートUSB)ほか特別装備を装着する。価格は472万円と100万円以上のアップだが、これだけの装備をすべてオプションで選ぶとなると、とてもではないがこの値段には収まらない。
ところで新型A3には、1Lと2Lエンジンがラインナップするが、2Lモデルの導入は少し遅れて秋となるようだ。この2モデルの大きな違いは、排気量や出力の他に駆動方式で、1LがFF、2Lが4WDとなる。さらにサスペンション形式も異なる。フロントは両モデルともマクファーソンストラットとなるがリアは1Lがトレーリングアーム、2Lが4リンクとなる。足まわりの違いで乗り味も変わってくるはずだが、今回は比較することができないので、このあたりは2Lモデルの試乗後にあらためて報告したい。
始動時の嫌な振動は、48V MHEV効果もありまったく感じなかった。静かな室内空間が維持されている。その恩恵は、走り出しても感じられる。言われなければ1Lだとわからないほど力強く、軽快なフットワークを味わわせてくれるのだ。さらに速度を乗せければ少し右足に力を込めれば、クルマはレスポンス良く反応する。
新形状のギアセレクターなどインテリアは大きく変わった
ちなみに新型A3セダンは、ホイールベースこそ従来と同じだがボディサイズは少し拡大した。全長は+30mmで4495mm、全幅は+20mmで1815mm、全高は+20mmで1425mm(すべてアドバンスドの数値)である。従来比で言えば30TFSIは、1.4Lエンジンから1Lになったこともあり、装備類が充実したにもかかわらず車両重量は1330kgを維持した。最高出力こそ122psから110psへダウンしたが、その分をモーターが加速時などにアシストしてくれるのでのダウンがわからないばかりか、逆に出力が向上したようにも感じる場面もある。
インテリアも大きく進化を遂げている。運転席に座り、まず目に入ってくるのが10.25インチを採用したメーターディスプレイと、10.1インチのタッチスクリーン式「MIB3」MMIナビゲーションシステムである。そしてギアセレクターはとてもコンパクトな新形状になったことにも気がつく。
また従来のMMIコントローラーは廃され、物理スイッチも極力省略されている。といっても機能が減ったわけではなく、それらはタッチ式ディスプレイに集約されることになった。ただし、運転中にタッチスクリーン操作は不可能であり、安全上もできないので新型では音声操作機能がより重要な役割を持つことになるので、そこは今後、進化が望まれるところである。
新型A3は、プレミアムCセグメントのベンチマークとして常識を超えた高品質かつ高い完成度を持ち、プレミアムブランド「アウディ」らしい仕上がりだった。この1Lモデルの完成度を知ってしまうと後に導入される2Lモデルへの期待は大きくなるばかりだ。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:井上雅行)
アウディA3セダン 1stエディション主要諸元
●全長×全幅×全高:4495×1815×1425mm
●ホイールベース:2635mm
●車両重量:1330kg
●エンジン:直3DOHCターボ
●総排気量:999cc
●最高出力:81kW(110ps)/5500rpm
●最大トルク:200Nm/2000-3000rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・47L
●WLTCモード燃費:17.9km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●車両価格(税込):472万円