販売好調が伝わるレヴォーグの実に半分近くを占めるのが、トップグレードの「STIスポーツ」である。「走り」にこだわった新しいブランドが意図するものは果たして何か。そのエッセンスを開発のキーマンであり、スバルテクニカインターナショナルの開発副本部長 高津益夫氏に訊いた。聞き手はMotor Magazine編集長 千葉知充。(Motor Magazine2021年8月号より)

公道でもレースでも求められる性能は同じ

千葉 STIスポーツの開発指針はどのようなものなのでしょう。

高津 これはSTIスポーツでもコンプリートカーでも基本的に違いはないのですが、ひと口で言えば「運転が上手くなるクルマ」にすることですね。実は、ドライバーが違和感や疲労感を覚えるのは、車体の応答遅れが原因なのです。STIでは、そこを可能な限り小さくすることを目標に突きつめてセッティングしています。

千葉 応答遅れとは?

高津 たとえば、一見真っ直ぐな道でも、路面が傾いていたりワダチや凹凸があったりと、タイヤの接地荷重も刻一刻変化しています。さらに、横風や横を走るクルマの影響など、さまざまな外乱の要素もあります。ドライバーはそれに抗いながら無意識にハンドルを調整しながら走っています。そこで応答遅れがあるクルマだと、反応が鈍いからドライバーはハンドルを切りすぎてしまう。クルマが反応した時点ではハンドルは切り過ぎているから慌てて戻す。この戻しの反応も遅れて、今度はハンドルを戻しすぎる。その繰り返しで、実際には微妙に蛇行しているのです。これではドライバーにはストレスがたまりますし、同乗者も疲れます。

千葉 その遅れをとにかく小さくして「運転が上手くなるクルマ」に仕上げるわけですね。

高津 レースでもまったく同じで、我々が参戦してきたニュルブルクリンク24時間耐久はその格好の実験場でもあるわけです。ニュルの北コースは道幅も狭いし路面のコンディションも良くないし、連続するブラインドコーナーの先は(クラッシュなど)何が待ち構えているかわかりません。究極の外乱状態です。そこで思いどおりの動きができるクルマというのは、プロレーサーにとっても非常に大事なことです。

画像: ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦マシン。なにが起きるかわからない究極の「外乱状態下」でも反応遅れのない動きを実現する技術は、STIスポーツにも反映されている。

ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦マシン。なにが起きるかわからない究極の「外乱状態下」でも反応遅れのない動きを実現する技術は、STIスポーツにも反映されている。

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