XC60はボルボSUVの中核となる人気モデルである。だれにでもマッチするサイズ感、そしてゆとりのスペース。だが本当に支持されている理由は、運動性能だろう。押しつけがましさのない走り味はXC60ならではだった。試乗モデルはボルボ XC60 B5 AWD インスクリプション。(Motor Magazine 2021年9月号より)

機械が主張しすぎない。でも正確無比なXC60の走り

第一印象は、やはり機械の存在感を意識させず、良い意味での大らかな走りの味わいだ。電子制御エアサスペンションはSUVによくあるゴツゴツ感とは無縁で、ゆったりとした乗り味に終始する。

大径タイヤによる足元の動きは路面に対して無駄がなく、空気バネの機能をフルに生かして、外からの入力を受け止め、ボディをフラットに保ってくれている。足元の動きがスムーズゆえに外から見る背の高さほど、ふらつき感などはなく、走りの上でも人に優しい。

スポーツモードを選べば、空気をギュッと圧縮したような骨太感が出て操作に対するレスポンスが向上。横置きエンジンレイアウトながらリアにも適宜駆動を伝達する4WDシステムとの組み合わせによって、常にタイヤが路面をつかむような安定感を生んでいる。

高速道路などでは視界の良さが際立つ一方、ボディが路面に近いような安定感がある。高速コーナーではロールは少なくステーションワゴンのような印象で、ハンドル操作も最小限で済む。

このあたりの手応え感や操作フィールは、欧州車が備える精度の高さと日本車のスムーズさを併せ持つ感じがする。滑りやすい路面で敏感すぎず、かといって手応えが失われることのない北欧生まれならではの正確で個性的なハンドリングだ。重すぎずスムーズな操舵感は、初めて乗る輸入車としても違和感はないだろう。

阿蘇周辺のワインディングロードに入ると、スポーツモードとこのステアリングフィールの相乗効果の恩恵はさらに大きい。操舵フィールが軽めで快適とはいえ、車両重量は約1.9トンである。気持ち良くハンドルを切っていくと、物理の法則で通常なら外へ持って行かれる力が大きく働く。それをエアサスペンションの効果で、タイヤが荷重を受け止めボディを支えるのだ。

一方、ハンドルは少しばかり反力を強めるものの、戻されるような力は感じにくく、正確に進路をキープ。ドライバーはもとより同乗者への負担も少なくスムーズにコーナリングラインを描き続ける。

パワーフィールもターボに加えて、モーターのアシストがあることで全体にカドのない乗り味を味わわせてくれる。ハンドリング性能同様に大らかで、下から滑らかにパワーが出てくる上に、変速時のショックは少ない。B6と異なりB5にはスーパーチャージャーは併用されていないが、モーターは2000rpm、エンジンは1800-4800rpmで最大トルクを発揮し、力強さは広範囲感じることができる。

いわゆるジャーマンスリーと呼ばれるライバルたちのようにことさら力強さを強調することはないが、車両重量を感じさせないしっとりとした乗り味に終始し、落ち着きのある走りを実現するXC60の走りは懐が深い。8速ATは日本のアイシンAW製ということもあって無駄な変速が少なく、仮に大きなパワーが欲しくなったときでも変速時のラグが小さいので速度をキープしやすいのも美点だ。

モーターの後押しも要所要所で行われているらしく、重量級のクルマを効果的に走らせていることに感心させられる。

画像: 2L直4ターボに小型モーターを組み合わせたマイルドハイブリッドを搭載。

2L直4ターボに小型モーターを組み合わせたマイルドハイブリッドを搭載。

突出したスペックや味付けをアピールすることなく、サスペンション、エンジン、トランスミッションのそれぞれの仕事をそつなく、無駄なく引き出していることで、安定した走りを演出。まさに三位一体のバランス感覚の良さでXC60の快適な走りは生み出されている。ジャーマンスリーの目に見えてわかる逞しさに対し、XC60はすべてを黒子にしてしまった点に清々しさを感じる。

今回は1日で400kmを超すロングドライブとなり、高速道路や市街地、ワインディングロードを一気に走行。本来であれば途中休憩が必要な距離に違いないが、一日中乗っていても疲れが残らないことが清々しい乗り味の表れだ。もちろん、事実上いち早く高速道路でのレベル2ドライブを実現させた運転支援技術の恩恵も大きい。

メインスイッチひとつで即座に追従走行を開始してくれる上に、復帰も速く、使うのを躊躇っていた者でさえあっさりと馴染むことができた。高速ドライブでのストレスフリーによって、疲れが残らなかったことも確かである。

輸入車SUVで何を選んだら良いかと悩んだ時、必ずやこのXC60が思い浮かび、多くの人の期待に応えてくれるに違いない。長距離を乗ってこそわかる魅力をはっきりと再確認することができた。(文:瀬在仁志/写真:永元秀和)

ボルボ XC60 ラインナップ

B5AWDモメンタム/2L直4DOHCターボ+電気モーター:639万円
B6AWDインスクリプション/2L直4DOHCターボ+電動スーパーチャージャー+電気モーター:739万円
B6AWD Rデザイン/2L直4DOHCターボ+電動スーパーチャージャー+電気モーター:799万円
リチャージ プラグインハイブリッドT8AWDインスクリプション エクスプレッション/2L直4DOHCターボ+電動スーパーチャージャー+電気モーター:834万円
リチャージ プラグインハイブリッドT8AWDインスクリプション/2L直4DOHCターボ+電動スーパーチャージャー+電気モーター:949万円

ボルボ XC60 B5 AWD インスクリプション 主要諸元

●全長×全幅×全高:4690×1900×1660mm
●ホイールベース:2865mm
●車両重量:1890kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:184kW(250ps)/5400-5700rpm
●最大トルク:350Nm/1800-4800rpm
●モーター最高出力:10kW/3000rpm
●モーター最大トルク:40Nm/2250rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・71L
●WLTCモード燃費:12.3km/L
●タイヤサイズ:235/55R19
●車両価格(税込):739万円

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