逞しく、高品質に成長し、さらに実用性も高くなった
スペイン、アリカンテの国際展示場に並んだ30台あまりのニューZ4は、ベージュメタリックのボディカラーを含めて、すべて同一仕様だった。sDrive35iと呼ばれるモデルで、搭載されるエンジンは306psの最高出力と400Nmの最大トルクを発生する3Lツインターボ直列6気筒。また組み合わされるトランスミッションは7速スポーツAT(デュアルクラッチ式)である。タイヤはフロントに225/35R19、リアに255/30R19のオプションサイズが装着されていた。
低いドライバーズシートに腰を落とし、シートとステアリングホイールをアジャストする。キャビンは確かに以前よりはゆったりしている。スペインの紺碧の空を楽しむためにもちろんトップを開けてスタートするが、開閉作業は20秒で完結する。
しかしオープン状態にするとトランク容量は310Lから180Lへとほぼ半減する。旧型では260Lと240Lで、そう大きくは変わらなかった。これがこの新しいシステムの唯一の弱点である。
またこのハードトップとシステムの重量だが、BMWのエンジニアはわずか30kgと語っていた。本体がアルミ製で2ピース構造なことが軽量化の決め手であるという。ちなみにボディが大きくなったこともあり、ニューZ4は旧Z4よりも合計で100kgほど重い。
それでも1600kgに対して306psだからパワーウエイトレシオは5.2kg/psと十分以上、スタートから100km/hに到達するには5.1秒、最高速は残念ながら250km/hでリミッターが介入する。
スタートはやや重厚な感じだ。とくに緩やかにアクセルペダルを踏み込むと、動き出してすぐに2速へシフトアップする。ゆえにスポーティな走りを好むドライバーはマニュアル操作をお勧めする。ただしアルミ製のパドルはやはり慣れを要する。どうして単純なパドルにしないのだろうか。
新たに採用されたドライビング・ダイナミック・コントロールによって、「ノーマル」、「スポーツ」、そして「スポーツプラス」と3段階のセッティングが可能になり、快適なドライブからサーキット走行まで広く楽しむことができるようになった。ただし「スポーツ」はスロットル、ステアリング、そしてトランスミッションの特性を変えるだけで、コーナーを攻めてゆくとDTC(スタビリティコントロール)はふつうに介入する。「スポーツ」と呼ぶのはちょっと大げさかもしれない。コーナーを楽しむ向きは「スポーツプラス」を選択すべきだが、DTCがオフになるので公道では慎重なドライブが望ましい。
ニューZ4は逞しく、そして高品質に成長した。またメタルトップの採用によって、実用性も大幅に改善された。それゆえこれまでのZ4より多くの支持者を得るに違いない。
この日テストしたトップバージョンのsDrive35iの価格は6速MT仕様で4万7540ユーロ(税別)となる。ちなみに旧Z4でこのモデルに近い258psの30iは4万2900ユーロで、単純な比較では650ユーロ(約8万5000円)高となっている。
もし、新しいZ4がこの価格差で日本でも販売されれば、とくにまったく新しい35iは、メルセデスSLK350どころかSL350、あるいはボクスターとケイマンなどを候補に挙げて迷っているスポーツカーファンに衝撃を与えるに違いない。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)
BMW Z4 sDrive35i 主要諸元
●全長×全幅×全高:4239×1790×1291mm
●ホイールベース:2979mm
●車両重量:1600<1580>kg
●エンジン:直6 DOHC ツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:225kW(306ps)/5800rpm
●最大トルク:400Nm/1300-5000rpm
●トランスミッション:7速DCT<6速MT>
●駆動方式:FR
●EU総合燃費:11.1<10.6>km/L
●タイヤサイズ:前225/45R17、後255/40R17
●最高速度:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:5.1<5.2>秒
※EU準拠