自動車用語で「バネ下」という言葉がある。そして、俗説にバネ下重量の軽減はバネ上重量の軽減の4倍の効果があると言われたりもする。これはあくまでもイメージで定量的なものではないが、ボディ本体側の軽量化よりも効果的なのは事実だ。ここでは、バネ下の部分と、その軽量化になぜそれほどの効果があるか、理由を解説していこう。

バネ下重量の軽量化は、ボディの軽量化の4倍の効果がある?

走行性能に重要と言われるバネ下重量だが、どこからどこまでがバネ下かというと、ざっくりとボディ本体下部を中心とした可動部と考えていい。これに対して、サスペンションを装着しているボディ側をバネ上と呼んでいる。

画像: 「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載。

「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載。

具体的に見ていこう。バネ下のパーツでわかりやすいものは、まずタイヤとホイールだ。また、インボードブレーキをはじめとするの特殊な構造を除いて、ブレーキキャリパーとブレーキディスクもバネ下となる。そのほかの代表的なものはサスペンション関係だ。サスペンションアーム類、スプリング、ショックアブソーバー、スタビライザーなどもその代表的なものとなる。

また、サスペンションの構造を考えると独立式の方が車軸式よりもバネ下を軽くできる傾向となる。とくにリアサスペンションはFRや4WDの車軸式の場合、バネ下に駆動系パーツを組み込まれており、デフやプロペラシャフトまで加わってしまうので、重くなる傾向となるのだ。

■車軸式と独立式のバネ下重量の比較

画像: 上の車軸式の場合、デフやデフオイル、ドライブシャフトが内蔵されるホーシングもバネしたとなり重くなる。独立式サスペンションはそれがないためフットワークがいい傾向となる。

上の車軸式の場合、デフやデフオイル、ドライブシャフトが内蔵されるホーシングもバネしたとなり重くなる。独立式サスペンションはそれがないためフットワークがいい傾向となる。

では、バネ下重量の低減のためにどうしたらいいのか。一般的なところではホイールを軽合金のアルミ製にすること。またマグネシウム製を使用するという手もあるが、これは高価になることや耐久面をはじめとする実用面から一般的でなく、モータースポーツで使用されることが多い。ブレーキキャリパーも、通常は鋳鉄製だがスポーツカーなどではアルミキャリパーが使用される。サスペンションアームはアルミ鍛造製を用いることもある。

ショックアブソーバーも、レーシングカーでストラットシェルケースをアルミ製にしたり、単筒式のショックアブソーバーに限られるが、ガスやオイルを入れる本体を上側にし、ロッドを下側にした倒立式構造としてバネ下重量の低減を図ることもある。

それぞれコストがかかることで、どうしてここまでしてバネ下重量を削っていくのか。それはタイヤの追従性を高めるためで、タイヤと路面が接地している時間を少しでも長くするためだ。例えばラリーのジャンプから着地する時のように路面からタイヤに強い入力があった場合、バネ下となるホイールやサスペンションアームが軽ければ、タイヤがボディ側に跳ね上がっても、それを受け止めるスプリングやショックアブソーバーへの負担が少なくなる。

画像: さまざまな路面を走破しなければならないラリーでもバネ下重量の削減は重量。とくにジャンプなど強い入力がある場合にはその効果は高い。

さまざまな路面を走破しなければならないラリーでもバネ下重量の削減は重量。とくにジャンプなど強い入力がある場合にはその効果は高い。

その後、スプリングが伸びたときにも、ショックアブソーバーの減衰力でタイヤが適正な位置に落ち着きやすくなる。アルミ製のシェルケースや倒立式ショックアブソーバーを採用するのも、この軽快な動きを確保するためだ。

もちろん、それほど極端に強い入力でなくても、バネ下の軽量化はフットワークの軽快さにつながり、レーシングカーなどは安全性の確保に細心の注意を払いながらバネ下重量を削り取り、ロードホールディングを確保しているのだ。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)

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