Sモデルらしく先進テクノロジーを満載
アウディのラインアップが他のプレミアムブランドに対して特徴的なのは、ノーマルモデルの他に2種類のスポーツ系モデルを揃えていることだ。Sモデル、そしてRSモデルが、それに当たる。
そのふたつのラインの線引きにどこまでの明確な基準があるのかは微妙なところだが、大まかな括りとしては、Sモデルはあくまでベースモデルの延長線上にあって、その頂点として君臨する存在であり、一方のRSモデルはベースモデルのポテンシャルを究極的なレベルまで引き伸ばしたものと区切るのが適切なように思える。現在、唯一このふたつのモデルを同じ時系列の中に揃えるS6とRS6を見れば、それで大体外れてはいないはずだ。
そのうちのSの名を冠したモデルが、現行A4シリーズのトップレンジとして新たに加わることとなった。そう、S4のデビューである。
この新型S4は、単なる派生車種のひとつとして片付けるわけにはいかないくらい多くのトピックを揃えたモデルだ。そのうち、もっとも大きいのがエンジン。先代のV型8気筒4.2L自然吸気ユニットに対して、新型はV型6気筒3L直噴スーパーチャージャー付きユニットへと改められたのだ。
思えば先代は、いわゆるDセグメントプレミアムカーとV型8気筒の組み合わせの先陣を切るモデルだったわけだが、ライバルたちを巻き込んでおいてわずか一代での変節は、いかにも一歩先を行くアウディらしいもので、ダウンサイジングという最近の潮流に則ったものだと言えるだろう。
もっとも、それは当然、単なる縮小化ではない。たしかに気筒数は減り、排気量は小さくなったが、直噴+過給器のTFSIテクノロジーの採用によって、むしろパフォーマンスは向上している。333psという最高出力こそ先代S4の344psにやや劣るものの、最大トルクの440Nmは逆に30Nmの向上を果たしているのだ。
そしてトランスミッションには、同時に日本導入が開始された2.0TFSIクワトロと同様にA4シリーズ初の7速Sトロニック(DCT)が採用されている。ちなみに先代は6速ティプトロニックATであった。
話題はそれだけには留まらない。このS4で初お目見えとなる、まったくの新機軸がアウディスポーツディファレンシャルだ。これは後輪の左右トルク配分をアクティブに可変させて、走行安定性と旋回性を高めるシステムだ。簡単に言えば、三菱ランサーエボリューションのスーパーAYCやBMW X6のダイナミックパフォーマンスコントロールと同じ働きをするものである。
さらに、A4にも設定されているアウディドライブセレクトも、日本仕様のS4には標準で備わる。ステアリングの操舵力やギア比、ダンパー減衰力、エンジンやトランスミッションの特性を任意で切り換えることができるこのシステム、新型S4用ではこのスポーツディファレンシャルも含めた統合制御を行う。
こんな風にあらゆる部分がハイテク仕掛けなのが、このS4。そのポテンシャルを探るべく試乗したのはセダンモデルであったが、もちろんアバントモデルも揃える。