2009年、アルファロメオ ミトがついに日本に導入された。まずは1.4Tスポーツの6速MT仕様1モデルのみでの上陸だ。アルファロメオの本拠地ミラノと、生産地トリノの頭文字をとって、ミト(=MiTo)と名付けられたこのクルマは、どんなモデルだったのか。Motor Magazine誌では、デザインの原点となったとも言われる8Cコンペティツィオーネをともに連れ出し、興味深い試乗テストを行っている。ここではその取材の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年7月号より)

ドライバーを官能の世界へ導く8Cのパフォーマンス

画像: 最高出力450ps、最大トルク480Nm。ミトは、スーパースポーツとしてのポテンシャルは高い。」

最高出力450ps、最大トルク480Nm。ミトは、スーパースポーツとしてのポテンシャルは高い。」

そんなミトについて論じるためには、前提条件として8Cコンペティツィオーネに触れておく必要がある。2006年のパリ国際モーターショーでデビューを飾った世界限定500台のこのスペシャルモデルも、実は日本ではこの2月からようやくデリバリーが始まったばかりである。

率直に言って、8Cコンペティツィオーネに対しては、これまで必ずしもポジティブな印象を抱いていたわけではなかった。一番の理由はデザイン。それこそ159を筆頭とする現行のアルファロメオ各モデルとの整合性のない、レトロ風味の強いその姿に魅力を、あるいは未来を感じなかったからだ。

しかしミトの登場で、8Cに対する印象は大きくポジティブ方向へと振れることになった。まんま8Cを想起させる素晴らしく個性的なその姿を見て、8Cが一発だけの、言葉は悪いが「ヤリ逃げ」的なレトロ志向のモデルではなく、次世代のアルファが辿る道を示しているのだと知ることになったからである。

予期せず訪れた、そんな8Cのステアリングを握れるチャンス。明け方、初めて日本の路上で対面した8Cは、頭の中にあった姿よりずっと魅力的に思えた。必ずしもレトロなだけでなく、現代のスーパースポーツらしい資質をも随所にちりばめたそのフォルムは、大好きになったとまでは言わないが、これはこれで大いにあり、と認められるものだ。

艶めきに彩られたコクピットで、豊潤な時間を堪能できる

画像: 8Cコンペティツィオーネのインテリア。スパルタン過ぎず、カーボンとレザーを巧みに組み合わせて高級感さえ感じさせる。シフトチェンジはパドルシフトで行う。

8Cコンペティツィオーネのインテリア。スパルタン過ぎず、カーボンとレザーを巧みに組み合わせて高級感さえ感じさせる。シフトチェンジはパドルシフトで行う。

インテリアの印象はさらに良かった。眼前に2つの大きなメーターを置き、円形のエアダクトを配したレイアウトはアルファロメオの古典と言うべきもの。しかしカーボンとレザーを大胆に組み合わせて生み出された雰囲気は抜群だ。何も凝ったことをしているわけじゃない。それなのに、この艶めきである。

しかし何より心揺り動かされたのは、その走りの豊潤過ぎる世界だ。4.7L V8エンジンの吹け上がりはひたすら鋭く、幾重にも重なったサウンドが織り成す歌声は忘我の境地へ導き、ずっとアクセルを踏んでいたくなるほど心地良く鳴り響く。高速域までスタビリティ高く、それでいて極めてレスポンシブルなフットワークも絶品。素晴らしいステアリングの感触とキレ味、450psを受け止める後輪の無類のトラクションは、タイトなワインディングでもグイグイ攻めていける。

こんなに頭を真っ白にしてクルマを走らせたのは、いったいいつ以来だろう。クルマに対して官能なんて言葉は滅多に使うものじゃないと思っているが、8Cの走りには、まさしくそれがあったように思う。

しかも、それは同じエンジンのマセラティグラントゥーリズモでは感じなかったものだ。そう、アルファロメオにしか演出できない走りの世界、あるいは「血」とでも呼ぶべきものは、まだまだ生きていたのである。それを思っただけでも大いに鳥肌が立ってしまった。

 

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