小気味良い走りを望むなら、ベストな特性と言えるだろう
最高出力155ps/5500rpm、最大トルク20.5kgm/5000rpmというスペックの1.4Lターボユニットは、低速域から十分な力を発揮する。操作系のフィーリングの良さと合わせて発進はラク。巡航時にシフトダウンせずアクセルを踏み込んでも、スーッと加速してくれる。2ペダルの必要性は、まるで感じさせない。高回転域での伸びはそこそこだが、小気味良く走るにはベストの特性と言い切れる。
サスペンションは想像する以上にしなやかだ。これは4輪にリバウンドスプリング内蔵ダンパーを使うことでロールを抑えられたから。その弊害でフルバンプするほど追い込んだ時には強めの当たりを示す感もあるが、基本的には乗り心地は良い。
それでいてステアリングの初期応答性は良く、切った通りスイスイとノーズが入る。その先で147などのように急にアンダーステアに転じたりといった心配も無用。ロール感は小さくないが、終始一貫した挙動は安心してリミットまで踏み込もうという気にさせるのだ。
そんな風に走らせたい時にはシフトレバー前の「D.N.A.」スイッチを「N」から「D」に切り換えるといい。するとパワーステアリングのアシスト量が減らされて感触がダイレクトに変化する。VDCの設定も変更されるほか、オーバーブースト機能によってエンジンの最大トルクが23.5kgm/3000rpmまで増大される。
しっかりとしたステアリングの手応えに加え、エンジンのツキがさらに鋭くなることで、さらに楽しめる走りの世界へと誘う。Q2機能と呼ばれるブレーキLSDの効果はそれほど強くはないが、それでも立ち上がり、舵角が残ったままでもしっかり加速しながら立ち上がっていく様は、頼もしさすら感じさせると言えるだろう。
これからのアルファロメオはこの2台が示す、まさに「この方向に」進む
個性を強調したエクステリアに優れた快適性、そして真っ当な高性能を併せ持ったミトは、久々にアルファロメオの魅力をストレートに体現したモデルだ。
イメージリーダーたる8Cコンペティツィオーネが登場し、それに続いてブランドのエントリーモデルが、まさにその8Cの見た目のイメージと、種類は異なるが理屈抜きに楽しめるという意味では共通の走りっぷりを引っ提げてデビューを飾った。このことは一体どう解釈すれば良いのだろうか?
この段階で言えるのは、トップとボトムがこうなった以上、今後のアルファロメオは8Cとミトが示す、まさにこの方向に進むだろうということだ。それは単なるデザイン、あるいは走りの楽しさの話ではない。理屈では説明できない魅力にあふれたクルマづくりという本来のアルファロメオのあり方に、帰っていくに違いないと・・・いう話である。
その血が薄まってなどいないということは、すでに証明されている。信じて、期待して良いはずだ。(文:島下泰久/写真:永元秀和)
アルファロメオ ミト 1.4T Sport 主要諸元
●全長×全幅×全高:4070×1720×1475mm
●ホイールベース:2510mm
●車両重量:1220kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1368cc
●最高出力:114kW(155ps)/5500rpm
●最大トルク:201Nm/5000rpm
●最大トルク(Dynamic):230Nm/3000rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●10・15モード燃費:13.6km/L*
●タイヤサイズ:215/45R17
●車両価格:285万円(2009年当時)
*※F.G.A.J参考値
アルファロメオ 8Cコンペティツィオーネ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4380×1895×1340mm
●ホイールベース:2640mm
●車両重量:1660kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4691cc
●最高出力:331kW(450ps)/7000rpm
●最大トルク:480Nm/4750rpm
●トランスミッション:6速AMT(Q-セレクト)
●駆動方式:FR
●10・15モード燃費:5.5km/L*
●タイヤサイズ:前245/35R20、後285/35R20
●車両価格:2259万円(2009年当時)
*※F.G.A.J参考値