2021年11月4日、BMWジャパンは電気自動車の「iX」と「iX3」を同時に日本デビューさせた。ともにSUVタイプの電気自動車だが、似ている点もあれば違う点も多い。その違いを考察してみよう。

VHSからDVD、そしてブルーレイディスクへ

BMWは2000年にはじめて「X5」を発表したときから、SUV(スポーツユーティリティビークル)のことをSAV(スポーツアクティビティビークル)と公式に呼称している。以来20年以上を経過したいま、SAVに位置付けられるモデルはBMWの中核車種のひとつとなっている。

そんなBMWが2021年11月に日本デビューさせた最新モデルが、バッテリー電気自動車(BEV)のSAVである「iX」と「iX3」の2台だ。デザインの違いなどはあるが、バッテリーに蓄えた電力でモーターを駆動して走るという基本システムに変わりはない。だが、BMWジャパン プロダクトマーケティングの佐伯氏は「今までのエンジン車のSAVがVHS(ビデオ)だとしたら、iX3はDVDで、iXはブルーレイディスクになったほどに進化している」という。

簡単に言ってしまえば、iX3はX3の電気自動車版だが、iXは次世代を見据えて開発された電気自動車専用モデルだ。では、その違いをパートごとに比べてみよう。

外観:「伝統のiX3」と「革新のiX」といったスタイル

画像: 大型化されたキドニーグリルやスリムなヘッドランプなど、BMWのアイデンティティを次世代に進化させたiXのスタイリング。

大型化されたキドニーグリルやスリムなヘッドランプなど、BMWのアイデンティティを次世代に進化させたiXのスタイリング。

BMW iX3とiXのボディサイズを比較

■BMW iX3 Mスポーツ
・全長×全幅×全高:4740×1890×1670mm
・ホイールベース:2865mm
■BMW iX xドライブ40(xドライブ50も同じ数値)
・全長×全幅×全高:4955×1965×1695mm
・ホイールベース:3000mm

ボディサイズを見比べてみると、iXはiX3よりひとまわり大きいといったところ。iX3の外寸は、エンジン車やPHEVのX3とほぼ同じでホイールベースも共通だ。スタイリングも基本的にはほかのX3と共通だが、BMWロゴやキドニーグリル、リアセクションなどにブルーのアクセントを入れて、「i」モデルであることを主張している。それでも、その主張は控えめだから気にはならないだろう。

iXは、デザインも次世代のBMWを目指している。キドニーグリルは大型化され、しかもエンジン冷却の必要がないからパネルとなっている。BMWラインナップ中でもっともスリムなヘッドランプや薄くシャープなテールランプなど、BMWのアイデンティティを受け継いでいるが、今までにない進化したデザインとなっている。

伝統の「iX3」に革新の「iX」といったところだろうか。だが、将来的にはBMW車はiXのデザインを継承していくことになるのだろう。BMWでSAVタイプの電気自動車に乗ってみたいけれど、あまり目立ちたくないというなら、iX3のほうが無難かもしれない。

インテリア:iXのコクピットは、まさに次世代感覚

画像: カーブドディスプレイにメーターパネルとコントロールパネルを一体化して、きわめてシンプルなiXのコクピット。日本仕様は右ハンドルとなる。

カーブドディスプレイにメーターパネルとコントロールパネルを一体化して、きわめてシンプルなiXのコクピット。日本仕様は右ハンドルとなる。

iX3も12.3インチのマルチディスプレイメーターとタッチディスプレイを備え、最新のモデルらしくインターフェースも進化している。だが、それでも従来のクルマからの発展型といった感じだ。

iXのインテリアは、エクステリア以上に次世代を感じさせる。BMW車として初めて、メーターパネルとコントロールパネルは一体化されて形状を湾曲したカーブドディスプレイを採用。インパネまわりは極めてスッキリしており、六角形状のステアリングホイールも特徴的だ。

シートなどの本革のなめしにはオリーブの葉を用いるなど、環境にも配慮したiXのインテリアはBMWのこれからを示唆しているようだ。

パワートレーン:iX3は1モーターのRWD、iXは2モーターの4WD

画像: iXは前後にモーターを搭載する4WD。駆動用バッテリーは床下に敷き詰められている。

iXは前後にモーターを搭載する4WD。駆動用バッテリーは床下に敷き詰められている。

両車ともバッテリーの電力でモーターを駆動して走る電気自動車だが、iX3は1モーターの後輪駆動、iXは車名に「xドライブ」が付くように前後にモーターを搭載した2モーターの4輪駆動という大きな違いがある。

どちらもシートの下に駆動用バッテリーを搭載し、フル充電での航続距離も460〜650kmと十分なもの。今や日本国内の充電スポットもかなり増えているから、長距離ドライブも充電の場所やスケジュールを念入りに検討しておけば問題ないだろう。

最高出力を見ると、iX3(210kW/286ps)ですらかつて国産車にあった自主規制値(280ps)を超えているし、iXは40(240kW/326ps)でもM235i(225kW/306ps)をしのぎ、50(385kW/523ps)に至ってはM3・M4コンペティション(375kW/510ps)を超えるというハイパワーぶりだ。いずれもパフォーマンスは十分以上のものを発揮してくれるはずだ。

ただし前述のようにiX3は後輪駆動だから、トラクションコントロールの類いは標準装備されているとはいえ、SUVだからといって必要以上に悪路走行を試すのは禁物。あくまでセーフティドライブを心がけたい。

装備など:どちらもクラストップレベルの充実ぶり

画像: iXのウンチクその1。ボンネットはサービス用のためユーザーは開けられない。そこでボンネット前端のBMWロゴがウインドーウオッシャー用のリッドになっている。

iXのウンチクその1。ボンネットはサービス用のためユーザーは開けられない。そこでボンネット前端のBMWロゴがウインドーウオッシャー用のリッドになっている。

どちらも、安全機能・運転支援システム「ドライビング アシスト プロフェッショナル」は標準装備しているが、ハンズオフ機能付き渋滞時運転支援機能はiX3にのみ標準装備されている。スマートフォンとリンクするBMWコネクテッド ドライブや、音声入力が可能なインテリジェント パーソナル アシスタントはどちらも標準装備。iXではさらに、オーディオスピーカーから特別に作曲された音が発せられて次世代の走りを体感できるアイコニック サウンド エレクトリックも備わっている。

微妙な違いはあるが、いずれも安全&快適装備は充実しており、カテゴリーにおいてはトップレベルのものといえるだろう。

車両価格(税込)は、iX3 Mスポーツが862万円、iX xドライブ40が981万円、同50が1116万円。いずれもそれなりのプライスだが、メルセデスEQのEQCが895万円、アウディのeトロンが935万円〜1256万円という価格だから、法外に高いわけではない。

iX3やiXは、これ1台で事足りる電気自動車になったと言える。予算的に余裕があり、SUVタイプの電気自動車で「サステイナブルな駆け抜ける歓び」を味わいたいのなら、ぜひ試してみては、いかがだろうか。(文:Webモーターマガジン編集部 篠原政明)

画像: iXのウンチクその2。シートなどの本革は環境を重視してオリーブの葉などでなめされており、その証としてダッシュボードにオリーブの葉のイラストが刻印されている。

iXのウンチクその2。シートなどの本革は環境を重視してオリーブの葉などでなめされており、その証としてダッシュボードにオリーブの葉のイラストが刻印されている。

■BMW iX3 Mスポーツ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4740×1890×1670mm
●ホイールベース:2865mm
●車両重量:2200kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:210kW(286ps)/6000rpm
●最大トルク:400Nm(40.8kgm)/0−4500rpm
●バッテリー容量:232Ah
●バッテリー総電力量:80kWh
●WLTPモード航続距離:460km
●駆動方式:RWD
●タイヤサイズ:前245/45R20、後275/40R20
●車両価格(税込):862万円

■BMW iX xドライブ40<50> 主要諸元

●全長×全幅×全高:4955×1965×1695mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2380kg<2530>
●モーター:交流同期電動機×2
●システムトータル最高出力:240kW<385kW>
●システムトータル最大トルク:340Nm<365Nm>
●バッテリー容量:232Ah<303Ah>
●バッテリー総電力量:76.6kWh<111.5kWh>
●一充電走行距離:450km<650km>
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:255/50R21
●車両価格(税込):981万円<1116万円>

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