手頃なサイズ感と個性的なデザインで人気となっているホンダ ヴェゼルを、ロングツーリングに連れ出す機会に恵まれた。高速道路から山岳路まで、およそ700kmに及ぶ道中で感じたのは、クラスを超えた上質な乗り味と疲労の少なさだった。(Motor Magazine2021年12月号より)

絶妙のバランスと上質さを感じさせるフォルム

街でホンダ ヴェゼルとすれ違うたびに、その後ろ姿を目で追ってしまう。ヴェゼルのスタイリングには、そのくらい人を惹きつける力があると思う。もちろんデザインの好みは人それぞれだけれど、ヴェゼルの造形でとくに優れていると思うのは、プロポーションに代表されるバランスの良さであり、細部の緻密な作り込みといった部分にある。

改めてヴェゼルのボディサイドをじっくりと眺めると、水平に伸びるキャラクターラインによってボディが上下に二分割されている。このラインが、躍動感と落ち着いた印象の両方を印象づける絶妙の高さに設けられている。

また、このキャラクターラインとテールライト部分で融合するテールゲートの位置や角度も完璧で申し分ない。さらにいえばテールライトを取り囲むプレスラインや前述したキャラクターラインのエッジは実にシャープで、これが優れた精度感や質感の高さを表現している。

決して派手ではないものの、ヨーロッパのプレミアムブランドを思い起こさせるような、上品で質の高いデザインだと思う。

画像: 開放感を増す横基調のデザイン。Aピラーの角度設定とドアミラーの配置も絶妙。

開放感を増す横基調のデザイン。Aピラーの角度設定とドアミラーの配置も絶妙。

高速道路から山岳路まで秀逸だった足まわりの設定

走りの味わいにも、どこかヨーロッパ車に通じる部分がある。基本となるボディ剛性が高いことはいうまでもないが、ヴェゼルでとくに印象的なのは足まわりから加わった振動がすっと素速く収束するところ。おかげでボディのソリッド感が強く、上質なクルマに乗っているという深い満足感が味わえる。この辺はヴェゼルに限らず、フィットやシビックにも共通した傾向といえるだろう。

結果として乗り心地の質も高いが、だからといってヴェゼルのサスペンションがフワフワかといえばそうではなく、むしろ引き締まっていて強靱な印象を与える。このため高速道路ではフラットで安定した姿勢を保ち、長距離ドライブでも疲れにくい。

また、ワインディングロードではハンドル操作に対する軽快なレスポンスを示して、思いどおりにコーナーをクリアできる。こうした「ほんの少し硬めの乗り心地」と「過敏過ぎることのない、心地いいレスポンス」といったシャシのセットアップも、最近のホンダの持ち味になっているようだ。

ヴェゼルが高速道路で疲れにくい理由は、ほかにもある。さまざまな先進運転支援システムを統合したホンダセンシングの、アクティブレーンキーピングやアダプティブクルージングコントロールの作動が正確かつ滑らかで、ドライバーの疲労軽減に大きく役立っていることもその理由のひとつだろう。

この種の先進運転支援システムについて語るとき、ついついカメラの性能や画像処理能力の話題に陥りがちだが、そうしたシステム構成が重要な一方で、クルマとしての足腰がしっかりできあがっていないと滑らかな走りを実現できないのも事実である。ヴェゼルの場合も、この両方が高い次元で作り込まれているからこそ、安全で快適な先進運転支援システムが完成していると捉えていいだろう。

視界が広々としていて、ワイパーやボンネットの凹凸といった余計なものが見えないのも、ヴェゼルのロングクルージング性を改善している理由のひとつ。同じ視界の面では、ドアミラーの根もとをドアパネル側に取り付けることでAピラーとドアミラーの間にすき間を生み出し、たとえば交差点を右左折する際に横断中の歩行者を視認しやすくするという工夫まで折り込まれている。クリアな視界も、間違いなくヴェゼルの美点だ。

今回はFFモデルと4WDモデルからなる2台のe:HEVモデルを連れ立って都合700kmを超えるロングドライブに出かけたが、FFはよりシャープな足まわりでハンドリング重視、4WDはしっとりと落ち着いた乗り心地重視のサスペンションに仕上がっていた。基本的に電気モーターでタイヤを駆動するe:HEVは走りが滑らかなうえに燃費も良好だった。その走りのフィールは、ヴェゼルの洗練された佇まいにぴったり似合っているように思う。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

画像: FF(写真手前)は軽快感を、AWDはしっとりとした乗り心地を重視した味付けとなっていた。

FF(写真手前)は軽快感を、AWDはしっとりとした乗り心地を重視した味付けとなっていた。

ホンダ ヴェゼルe:HEV Z主要諸元

●全長×全幅×全高:4330×1790×1590mm
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1380<1450>kg
●エンジン:直4DOH+モーター
●総排気量:1496cc
●最高出力:78kW(106ps)/6000-6400rpm
●最大トルク:127Nm/4500-5000rpm
●モーター最高出力:前96kW(131ps)/4000-8000rpm
●モーター最大トルク:253Nm/0-3500rpm
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:FF<4WD>
●燃料・タンク容量:レギュラー40L
●WLTCモード燃費:25.0<22.0>km/L
●タイヤサイズ:215/60R16
●車両価格(税込):289万8500円<311万8500円>
*<>=4WD

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