高い次元で保たれたスポーティな走りと乗り心地の良さ
ディーゼルアレルギーの蔓延する日本ではあまり知られていないが、ゴルフディーゼルのスポーツバージョンであるGTDは初代ゴルフの時代から存在していた。
正確にはGTIに遅れること6年、1982年にディーゼルの普及にともなって登場した。その正体はGTIとスタンダードゴルフの違いと同様で、スタンダードのディーゼルが当時まだナチュラルアスピレーション仕様で1.6Lの排気量から50psの最高出力を発生していたのに対して、ゴルフGTDはターボチャージャーを装備し70psを絞り出していた。
そして時代は変わり、最新のゴルフGTDは排気量2Lのターボディーゼルエンジンから最高出力170ps、最大トルク350Nmを発生する。またプレスリリースによると、スタートから100km/hにまで達する加速所要時間は8.1秒、最高速度は6速MTが222km/hをマークする。(6速DSG仕様は220km/h)
このゴルフGTDが日本に上陸する気配はないが、筆者はこの最新のディーゼルスポーツをテストする機会を得た。
ミュンヘン空港に用意されたゴルフGTDは、遠目から見るとほとんどGTIと同じように見えるが、近づくとグリルの赤ラインがクロームに代わっていることがわかる。ただ、ボディカラーがグレーであることもあってちょっと地味な印象を受ける。
インテリアはほとんどGTIと同じで、3本スポークのステアリングホイールは下が平らに削られているスポーツタイプである。しかし正面左側のタコメーターは5000rpm以上がレッドゾーン、右側のスピードメーターは240km/hでスケールが終わっている。
空港の敷地内からアウトバーンへとスタートした直後に「おや」っと思った。というのは押し殺されたようなターボディーゼルらしからぬ「サウンド」を発するからだ。低音から響き渡るこのスポーティトーンは、実はエレクトロマグネティック・サウンドジェネレーターによるものだ。まあ、確かに面白いがちょっと子供騙しっぽくて、別になくても良いかなと思う。
最初は6速MT仕様を選択したが、そのエンジン回転のピックアップはガソリンほどの冴えはないが1750rpmから発生する350Nmの最大トルクが車重1351kgのボディをグイグイと引っ張り、いつの間にかスピードメーターの針は200km/hに届いていた。
そして6速でようやく最高速度の220km/hをマークし、そのまま巡航することができた。シャシはおよそ10kg重くなったエンジンに対処するためにダンピングが適正化され、リアのスタビライザーの剛性を上げてロールを抑えている。
さらに、ノーマルゴルフに対してフロントが22mm、リアが15mmローダウンされている。またタイヤサイズは前後ともにゴルフGTIと同じ225/45R17が標準で採用されている。
この締め上げられたシャシにもかかわらず、乗り心地の良さは高い次元に保たれており、不快な突き上げやピッチングなどは感じられない。
そのお陰でドイツとオーストリアの国境にまたがる美しいワインディングロードの風景を楽しみながらスポーツドライブを堪能することができた。
もちろん、スポーツモデルとはいえディーゼルだから燃費は素晴らしく、欧州測定値で100kmあたり5.3L(6速DSG仕様は5.6L)は、すなわちリッターあたりおよそ18.9km(6速DSG仕様は17.9km) となる。つまり満タンで1000km近くを走破することが可能なのだ。
実はこの燃費がゴルフGTDユーザーにとっては最大の魅力で、年間の走行距離がドイツの一般ドライバーの平均の1万3000km以上走る人たちにとってはガソリンのGTIよりはずっと現実的な選択肢となるのだ。
ドイツでの価格はベースモデルが2万9350ユーロ(日本で約390万円)となる。(文:木村好宏)
フォルクスワーゲン ゴルフGTD 主要諸元
●全長×全幅×全高:4213×1779×1469mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1351kg
●エンジン:2L 直4 DOHCディーゼルターボ
●最高出力:125kW(170ps)/4200rpm
●最大トルク:350Nm/1750-2500rpm
●トランスミッション:6速MT(6速DCT)
●駆動方式:FF
●EU総合燃費:18.9(17.9)km/L
●最高速:222(220)km/h
●0→100km/h加速:8.1(8.1)秒
※EU準拠