定番でありながら野心家。新型が目指したのは「もう一歩先に」
新型ノア/ヴォクシーが第4世代へとフルモデルチェンジを果たした。目指したのは「より快適に、より便利に、より安心なミニバンとして家族や仲間が笑顔になる時間を演出」すること。そのために「ミニバンにしか実現できないうれしさを一層深化」させるという、まさにファミリーユースの王道を行くコンセプトが謳われている。
一方で、企画・開発・生産を一貫して統括してきた水澗(みずま)英紀チーフエンジニア(トヨタ車体株式会社取締役・執行役員 開発本部 本部長。ノア/ヴォクシーは2007年デビューの第2世代から開発を統括してきた)によれば、新型の開発陣には「もう一歩先に。新しいことにチャレンジしよう」という意気込みがあったという。
王道を行く定番ミニバンだけに、守るべき伝統とチャレンジスピリットの匙加減は、さぞかし難しかったと思う。ライバルに追いつきながら、大きく引き離す必要もある。だからこそ先代からの伸びしろが、やはりもっとも気になるところだ。そこで今回は、新型ノア/ヴォクシーの多彩な革新ぶりの中から7つのポイントを選んで、紹介していきたい。
革新 1: エクステリアから上級志向。最低限のサイズ拡大で最大限の上質感を演出
まず最初に触れておくべきはやはり、その存在感の革新ぶりだろう。
基本的なスタイルは3車型に分けられる。ノアにスタンダード/エアロの2タイプ、そしてヴォクシーという構成だ。グレード名はZ、S-ZとE-Fourモデルは2列目がキャプテンシートとなる7人乗りのみ、それ以外に2列目がベンチシートタイプの8人乗りも用意されている。
全長4695mm、ホイールベース2850mmという数値は先代から変わらない。一方で全幅は1730mmで、スタンダードモデルを含むすべてが3ナンバー化されたことは大きな変化と言える。全高は1895mm。長さ50mmのシャークアンテナを含めて、70mm高くなっている。
デザイン的には総じて、上級感が増した印象だ。メリハリがはっきりとしたマッシブなフェンダーを前後に備えるとともに、縦置きされていたテールランプを廃してアルファード/ヴェルファイアにも似たU字モチーフのリアエンドが新たに採用された。
3車の世界観を差別化しているのは、主にフロントマスクだろう。全グレードで厚みのある顔立ちは共通しているが、たとえばノアのスタンダードモデルの場合は、比較的シンプルな中にメッキのワインポイントがオシャレ感を引きたたせている。一方でエアロモデルでは、適度なインパクトをワイド感とともに演出。ほどよい「イカつさ」は、シニア層にも受け入れられやすいかもしれない。
革新 2: 販売体制の革新によって、ヴォクシーのお目立ち感がグレードアップ
そんな中、明らかに個性が際立っているのが新型ヴォクシーだ。2020年5月に販売チャネルが統合されたことで、どの系列ディーラーでもすべての車種が購入可能になった。ノアとの競合性がなくなったことによって、もともとインパクトたっぷりだったヴォクシーは、これまで以上に思い切りのいい「独自の世界観」によって差別化することができたという。
上段に配置されたLEDのデイタイムランニングライト、バンパーにビルトインされたフロントヘッドランプのコンビネーションは、まさに威圧感たっぷり。グリルには細身のバー形状から左右につなげて動きのある文様が施されるなど、かつてないプレミアム感とスポーティ感を醸し出している。
ともすればフロントマスクの「オシ出し感」ばかりが強調されがちだが、新型ノア/ヴォクシーはリアまわりにもしっかり重厚感が漂う。ベルトラインを上げることでサイドから見た「堂々感」も強まった。全身に漲る力感はもはや、ミドルクラスミニバンのそれではない。
力強さと言えば、ノア/ヴォクシーとしては初めて17インチホイールを採用していることにも、注目したい。スタンダードモデルでも16インチホイールを採用、足もとの力強さが増している。
これは、GA-Cベースのミニバン専用プラットフォームによって、基本骨格が一気に剛性を高めているおかげ。大径ワイドタイヤを履かせても、快適な乗り心地をキープすることが可能になった。