ラグジュアリーセグメントを皮切りに始まった電動化の波は、いまやDセグメントにも押し寄せつつある。この波をどう乗り越えていくかが今後の命運を左右する。(Motor Magazine2022年2月号より)

プジョー508が見せたPHEVのひとつの在り方

世代交代をした新型メルセデス・ベンツ Cクラスを中心に話題が回ったように受け取れたのが、2021年の日本市場で目にする欧州発Dセグメントモデルの動向だ。

Cクラスに先んじて2019年にモデルチェンジを完了させていたBMWの3シリーズはさておき、アウディの基幹モデルとしてのポジショニングは変わらないA4は、2015年に世代交代を行った5代目モデルが継続販売中だ。2021年には大胆なフェイスリフトを実施して全幅も拡大、さらに年には新たなパワートレーンを追加するなど意欲的なリファインを続けてその存在感を見せつけた。とは言え、このところA4は、大きなトピックからは少々距離を置いている感がないわけでもない。

ほかでもない、電動化への対応だ。そもそもヨーロッパの急進的な電動化の動きも踏まえ、いろいろと過渡期にあるとも言えそうなのが、このカテゴリーのラインナップということになるだろう。すでに近い将来のBEV専業化への転換を宣言しているブランドを筆頭に、現在ラインナップをしているエンジン搭載の各モデルの先行きは少々不透明というのが現状だ。

すでにアウディはピュアなBEVのソリューションを潤沢に持っている。その一方で積極的なPHEV化に踏み切れないという思いがあるのもまた理解できないわけではない。A4の逡巡はまさにその現れなのではないだろうか。

画像: アウディA4/A4アバント。2020年10月に4年半ぶりにビッグマイナーチェンジを実施。フロントおよびリアまわり、そしてブリスターフェンダーを採用して全幅を5mm拡大するなどエクステリアを刷新した。タッチ式スクリーンの採用などコネクトシステムも進化。12Vマイルドハイブリッド(MHEV)搭載車も登場し、2021年にはA4初のクリ ーンディーゼルを搭載した35TDI/40TDIも新設定。写真はA4 35TDIアドバンスド。

アウディA4/A4アバント。2020年10月に4年半ぶりにビッグマイナーチェンジを実施。フロントおよびリアまわり、そしてブリスターフェンダーを採用して全幅を5mm拡大するなどエクステリアを刷新した。タッチ式スクリーンの採用などコネクトシステムも進化。12Vマイルドハイブリッド(MHEV)搭載車も登場し、2021年にはA4初のクリ ーンディーゼルを搭載した35TDI/40TDIも新設定。写真はA4 35TDIアドバンスド。

その中で、「パワー・オブ・チョイス」というフレーズを謳いながら、自らのフラッグシップモデルである508シリーズにPHEVをいち早く日本にも導入したプジョーの動きに注目している。

ただし、PHEVでありつつもこのモデルの技術的特徴と言えそうなのは、搭載する駆動用バッテリーの容量を11.8kWhに抑え、対応する充電方法も200Vの普通充電に限定している。つまりチャデモ(CHAdeMO)と称する日本の急速充電規格には準拠していない。こうなると、自身で充電設備が用意できるユーザーに主眼を置いた販売となり、顧客層がある程度限定される。外出先での充電も、高速道路などに用意される急速充電器は使用できないからだ。

こうした使い勝手の制約があるのはやむを得ないながら、その分メリットもある。PHEVではありがちな価格上昇が抑えられ、さらにエンジン搭載モデルとボディ骨格を共有することで、後席居住スペースやラゲッジルームフロア上に同一の空間を確保できるなど、割り切った構造によってさまざまなベネフィットを享受可能であることが見逃せないポイントとなるのも事実。こうしたある種の割り切りった考え方やクルマの作り方というのも、今という時代のひとつの解なのかもしれない。

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