後輪寄りの配分としたBMWらしい4WDシステム
4WDスペシャリストのアウディはもちろんのこと、メルセデス・ベンツもトップモデルのSクラスには4WDバージョンである4マティックを用意している。
ところがBMWはせっかく電子制御の多板クラッチを使ったxDriveシステムを持っていながら、これまでトップモデルには4WDモデルが存在しなかった。しかし、ニュー7シリーズでようやく四輪駆動バージョンが追加されることになった。
この決定を受けてBMW開発グループは我々をプルービンググラウンドに招待し、市販化に向けての最終テストの様子を公開すると同時に、プロトタイプのステアリングを握らせてくれるというエキサイティングなイベントを開催してくれた。
プルービンググラウンドで我々を待っていたのは2台の7シリーズ。1台はすでに市販されている750i、もう1台はプロトタイプの750i xDriveである。
この4WDシステムは基本的には他のBMWモデルに搭載されているものと同じ多板クラッチ式で、コンパクトで軽量な構造ゆえ、わずか80kgの重量増で済む。
まずはこの4WDモデルの実力を見極めるべく、ウエットな路面を持ったスロープへ向かう。ここで4WDバージョンは左右の異なるミュー路面にまたがった状態で停止、続いてスロットルを開くと最初はやや姿勢を崩すが数秒後には力強く前進を始める。もちろん蛇行することなく直進させることが可能だ。一方の後輪駆動の750iは為すすべも方法もなく、蛇行して発進できない。
ウェット路面でも、オンザレール感覚で走行可能
続いてウエットハンドリングコースに向うが、ここではDSC(ダイナミックスタビリティコントロール)などをオン/オフして750i xDriveの実力を検証する。この4WDの7シリーズに搭載されているトルクトランスファーの基本配分は、他のBMW 4WDモデル同様にフロントに40%、リアに60%と、あくまでも後輪駆動のテイストを残している。それはこのハンドリングコースでも確認することができた。
すなわち、ウエットコーナーへややスピードを上げながら進入し、さらに右足を踏み込んでプッシュすると、後輪駆動車の場合はリアが簡単にブレークしてしまう。一方同じ状況でもxDriveではトルクが前輪へ伝わり安定を取り戻してコーナーから脱出することができる。反対にドライなコーナーでアンダーステアが出てしまった場合は後輪へ最大80%までの駆動力が与えられ、ここでもレールに沿って走るような感覚でコーナリングが楽しめる。
テストコースでの検証が終わると、今度はBMWがダイナミックハンドリングテストを行っている一般道路へ向かう。おそよ20分ほど走ったそこは山間のワインディングロードで、ここでは2台の7シリーズ(後輪駆動と4WDモデル)の他に現行530xiも同行する。
そして5kmほどのループをかなりのスピードで行ったり来たりしてドライビングダイナミクスを確認する作業を行う。このコースにはガードレールなどは存在せず、飛び出したら一巻の終わり。テストドライバーの仕事の厳しさを改めて感じてしまった。
さて、こうしてハードなテストを終えて、750i xDriveはいよいよ今秋からドイツを中心とした欧州での販売を開始する。価格はおよそ9万6000ユーロ(およそ1300万円)と予想される。(文:木村好宏)
BMW 750i xDrive (プロトタイプ) 主要諸元
●全長×全幅×全高:5070×1900×1490mm
●ホイールベース:3070mm
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:4395cc
●最高出力:300kW(407ps)/5500-6400rpm
●最大トルク:600Nm/1750-4500rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
※EU準拠