エンジンとDCTは文句なし。だが少し気になる点もある
エンジンに関しては、サクッと回り切れ味が良い。街乗りでも回転の上昇に淀みがなくて期待値と加速感がリンクする。シフトアップ時のつながりもスタータージェネレターが介入するベースモデルと比較するとわずかに機械的な間があるものの、7速化されたDCTの効果もあってか、パワーの落ち込みはなく以前よりもスムーズで力感が途切れることがない。加速態勢に移るとそのスムーズさがさらに増し、レッドゾーンの入り口である6600rpmの目盛りにタコメーターの針が吸い寄せられるように跳ね上がる。
一方、シフトアップ時はタコメーターの針がメリハリよくストンと落ちると同時に、連続して押し寄せる加速Gにより身体はシートに押しつけられる。このGの盛り上がりと安定した加速感は、このエンジンが高回転域でも十分なパワーを出し続けると同時にレスポンスも両立している証左だ。
もちろん細かなアクセルペダル操作に対するレスポンスも良く、旋回中の速度維持や加減速では右足の動きに敏感に反応する。スポーツモードにすれば6000rpm以上でもうひと伸びのパワーと切れ味が楽しめて、ポテンシャルの高さに圧倒される。パワーフィールもシャシ性能同様に実に明快で、洗練度が高いのだ。
一方、クルマ全体の洗練度の高さと作り込みの良さに対して、操作感の軽さが目についた。ブレーキのタッチやステアリングフィールなど、どこかゲーム機を操作しているような頼りなさがあるのだ。アダプティブシャシーコントロール「DCC」をスポーツモードにすれば反力は強くなるもののゲインも大きくなって、シャシが持つGのコントロール性能の高さが生きてこない。クルマ全体の動きは自然で良いのだが、操作感の面でやや「乗せられている感」がある。シャシの良さを考えると少しもったいないと思った。
新型ゴルフGTIのテストドライブを経て、終始車両の姿勢が安定していたことから「フラット感」という言葉が頭に浮かんだ。攻めたときには安定したシャシが、パワーがほしいときにはカバー範囲が広いエンジンが走りをアシストしてくれる。また、ドライバーの意思に対応すべく常にスタンバイしてくれる包容力もある。
新型GTIは性能を深く進化させると同時に、スポーツモデルを楽しむハードルを下げてくれる逸品である。走るほどにその印象が強くなっていった。(文:瀬在仁志/写真:井上雅行、永元秀和)
歴代ゴルフGTI
フォルクスワーゲン ゴルフGTI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4295×1790×1465mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1430kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1984cc
●最高出力:180kW(245ps)/5000-6500rpm
●最大トルク:370Nm/1600-4300rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム ・51L
●WLTCモード燃費:12.8km/L
●タイヤサイズ:225/40R18
●車両価格(税込):466万円