2021年12月22日に発表された新型8代目ゴルフGTIの完成度の高さについてはすでにレポートしてるが、ほかのモデルと比べるとどうなのか? その答えを求めるべく、フランス車とイタリア車の代表的なスポーツハッチ「ルノーメガーヌR.S.」「アバルト595コンペティツィオーネ」とともにロングドライブに出かけた。(Motor Magazine2022年3月号より)

エンジンの特性だけでも、3車は明らかに異なる

画像: ゴルフGTIはどんなシーンでも挙動が安定しており、今回の3車種の中では安心感がもっとも強かった。

ゴルフGTIはどんなシーンでも挙動が安定しており、今回の3車種の中では安心感がもっとも強かった。

ゴルフ8 GTI(以下mゴルフGTI)はゴルフ7 GTIパフォーマンスと同スペックのエンジン、電子制御油圧式フロントデファレンシャルロックやブレーキ制御を組み合わせたビークルダイナミクスマネージャーを得て、FFスポーツモデルの本流をさらに極めた。走り込むほどにその性能の奥深さに圧倒された一方、日常使いでは決してドライバーに牙を剥かないしつけの良さに、ゴルフGTIの伝統と底力を感じた。

対して、ライバルモデルとして用意された2台は性能、ルーツともに実に個性的だ。ルノー メガーヌR.S.(以下、メガーヌR.S.)はルノーの威信をかけてFF最速にこだわり、シビック タイプRやゴルフ7 GTIクラブスポーツなどと、ニュルブルクリンク北コースでのレコードタイム争いに挑み、勝ち抜いてきた。

一方、アバルトは創設者のカルロ・アバルト自身の星座にちなんだサソリのマークで知られるモータースポーツブランドで、レースシーンでの活躍とハイパフォーマンスモデルを数多く世に送り出したことで知られる。幾度となく厳しい経営状態を乗り越えて、その名を今に残している。

ドッカンターボに近いメガーヌR.S.のパワーフィール

実際に乗り比べると、各車の個性や伝統は明確に異なる。メガーヌR.S.に搭載される1.8L直4ターボエンジンは、小排気量でありながらセラミックボールベアリングターボユニットによって300ps、420Nmのスペックを絞り出す。これはゴルフGTIと比較して実に、55ps、50Nmも上まわる数値である。

画像: メガーヌ R.S.。後輪操舵システムの4コントロールはタイトコーナーでは逆位相、高速コーナーでは同位相に後輪を操舵する。

メガーヌ R.S.。後輪操舵システムの4コントロールはタイトコーナーでは逆位相、高速コーナーでは同位相に後輪を操舵する。

アクティブバルブ付きのスポーツエキゾーストのサウンドも特徴的で、R.S.ドライブモードを「スポーツ」や「レース」にすると、抵抗が少ない排気ルートが開かれ低周波音が効いたエンジンサウンドを響かせる。それと同時にエンジン本来の性能も引き出す。

フル加速時は、低回転域では排気音の高まりに対して一瞬加速感が遅れるが、3000rpm弱を過ぎると強烈な加速に身体はのけぞる。幸いにしてDCTでパドルシフトもあるので、ハンドルから手を離す必要はない。6速で各ギアの守備範囲は広いものの、シフトアップ後の回転域はフルブースト領域に収まる。

パワーフィールは中速域からグッと加速するいわゆるドッカンターボに近い。それでも加速感が息つく間もなく続くのは、スムーズに回るボールベアリングターボと各ギアがワイドレンジであるおかげだ。もしクロスレンジレシオであれば、使えるエンジン回転の幅が狭く、反応の良い過給を生かし切れないだろう。変速ロスの低減という意味でも、多段化が必ずしもがベストではないのだ。

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