2021年12月22日に発表された新型8代目ゴルフGTIの完成度の高さについてはすでにレポートしてるが、ほかのモデルと比べるとどうなのか? その答えを求めるべく、フランス車とイタリア車の代表的なスポーツハッチ「ルノーメガーヌR.S.」「アバルト595コンペティツィオーネ」とともにロングドライブに出かけた。(Motor Magazine2022年3月号より)

総じてラフ。けれどそれもまたアバルトらしい味わいだ

一方、コンパクトなボディにパワフルなエンジンを搭載するなど、サプライズパッケージが得意なアバルト595コンペティツィオーネ(以下、アバルト595)は、フィアット500をベースにギャレット製の大型タービンを組み合わせた1.4Lターボエンジンを搭載。ミドルグレードであるツーリスモの165ps、230Nmを上まわる180ps、250Nmまでパワーアップされている。

画像: アバルト595コンペティツィオーネ。ほかの2台よりも全高が50mmも高いが、しっかりとした足まわりのおかげで不快なロールなどはない。2ダッシュボード上には独立したブースト計を配置。シフトセレクターはボタン式となる。

アバルト595コンペティツィオーネ。ほかの2台よりも全高が50mmも高いが、しっかりとした足まわりのおかげで不快なロールなどはない。2ダッシュボード上には独立したブースト計を配置。シフトセレクターはボタン式となる。

トランスミッションは5速MTか5速AMTが用意されているが、試乗車はAMTだった。街乗りでは変速のたびに一瞬の間がありシングルクラッチであることを意識させるが、フル加速時のスムーズさはそれを忘れさせる。

小さなボディに対してパワーユニットは強力なので、その走りには弾けるような加速感があり、それはシフトアップ後も衰えを見せない。ターボの過給の勢いが残っているうちにその力を借りて変速して次へとつないでいく。変速中も加速していてそのまま次へとリレーされていく感覚で、変速の間を感じにくい。さらに、SPORTスイッチを押せば、最大トルクが230Nmから250Nmにアップする。

5速なので各ギアの守備範囲は当然広くなるが、メガーヌR.S.同様に不用意に変速しないのでターボの働きを妨げることがない。とくに4000rpmあたりの気持ち良さは抜群で、力強くレスポンスの良い走りを楽しめる。大型のターボの使い方を熟知した味付けといえる。

アバルト595の走りは、総じてちょっとラフなセッティングのような気もするが、そこにアバルトのこだわりといい意味での大らかさが見えた。

この点、ゴルフGTIはターボの力を借りてはいるものの、エンジンの回転上昇と力強さがリンクしていて、パワーは常にドライバーのコントロール下にある。ターボは常に最適なパワーを引き出す黒子に徹していて、過給の上昇は比較車2台のような二次曲線を描かない。あくまでもエンジンが「主」で、ターボは「従」だ。結果、幅広い領域でいつでもパワーを引き出せるフラット感があるユニットに仕上がっている。

ほかの2台はターボの勢いを常に感じ取れて、実にエキサイティングだ。メガーヌR.S.は右足を操作するたびに、明確な加減速のGを感じさせるし、アバルト595は過給の勢いをダイレクトに駆って、必要十分以上のパワーをひねり出す。そこには、情熱のようなものさえ感じさせる。冷静さを常に失わないゴルフGTIとはやはり対照的である。

ハンドリングと挙動にも各車の個性が表れている

ハンドリングも、それぞれに個性的だ。メガーヌR.s.は4輪操舵と強いダンパーのサポートがあるので、とにかく姿勢を乱さない。いや、正確に言えば操作に対しては実に直進性が強いのでレコードラインに強引に乗せていく感じ。ロールの収束力は強く、ドライバーのミスはそのまま反発Gとして返ってくる。

画像: エンジンは全車直4ターボだが、ゴルフ8 GTI(左)が2L、メガーヌR.S.(中央)は1.8L、アバルト595コンペティツィオーネ(右)は1.4Lとそれぞれ排気量が異なる。

エンジンは全車直4ターボだが、ゴルフ8 GTI(左)が2L、メガーヌR.S.(中央)は1.8L、アバルト595コンペティツィオーネ(右)は1.4Lとそれぞれ排気量が異なる。

発進時や加速時はスポーツモード以上では急激に立ち上がるトルクの抑制量が少なく、前輪の振動やハンドルへの反動が出ても、確実に前に進ませようとする。アクセルペダルを踏んでいる限り常に進行方向に向かって一直線に引き寄せられるような反応を見せ、前後や左右へのわずかな動きもない。

アバルト595はロール方向の動きは小さく、ねじ伏せるような走りになる。旋回方向の動きもハンドルをさらに切りこんでいくことでラインにのせていく感じとなる。その領域まで進んでいくと、ようやく足元の上下動が感じられ、アバルトならではの走りの奥深さが見えてくる。

小さいボディゆえに前後左右の動きが大きくなることを嫌い、低い車高と硬めのサスペンションを選んだ。一度姿勢をギュッと抑え込んだうえで、粘る感覚だ。可動域は狭いが、前後左右の動きをきちんと制御して、4輪のグリップを最大限に引き出してくれる。

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