雪道であってもクルマが思いどおりに動いてくれる
たとえば、カスタマイズにおいてホイールは比較的手を出しやすいパーツだが、決まり文句のように「高剛性」が謳われている。が、実は剛性が高過ぎるのも良くないという。タイヤがたわもうとしてもホイールが硬すぎると路面からの入力を跳ね返してしまう。つまり、接地が抜けてしまう。
エアロもしかりで、ダウンフォースで抑えつけ過ぎてもタイヤホイールの動きを規制してしまう。ということで、トータルバランスを取りながら開発されたのがモデューロXで、雪道でもバネ下がしなやかに動いているのが実感できた。
雪道では、「滑るのが怖い」というイメージが強いかもしれないが、それよりハンドルを切っても曲がらない方が怖い。その点、ヴェゼル モデューロXはしっかりした手応えがあり、舗装路と変わらない感覚で運転でき、しっかり舵が効く安心感がある。一般道なので限界域を試すことはできないが、それでも思いどおりにクルマが動いてくれるので「気持ち良く」そして「楽しく」走ることができた。
たくさんお金をかけて奢った装備ではなく、ていねいに開発した結果だという。つまり「精度」を高めたということだろう。ならば、そもそもベース車のヴェゼルをこのハンドリングにしてくれれば良いのに・・・とも思ったが、ヴェゼル モデューロXは接地感を上げている分、舗装路の幹線道路などにおいては、音や振動がベース車より大きくなるという。なるほど、メーカーの作るクルマは「最大公約数」を取っているということを改めて理解した。
電動化が進む昨今だが、ホンダは現状、プロペラシャフトを有するAWDが理想と考えている。いずれにしても、単に雪道でのトラクション性能を高めるだけでなく、四輪の駆動力を制御し、安心して楽しめるホンダらしいAWDモデルの登場を期待したい。(文:佐藤久実/写真:ホンダ)