2021年7月20日、デビューから7年以上経つ今も高い人気を保つポルシェのSUV「マカン」が2度目のマイナーチェンジを受けた。その内容はどういうものなのか、ベースモデルのマカンとトップモデルのマカンGTS、キャラクターの異なる2台の新型マカンを試乗して進化を検証した。(Motor Magazine 2022年4月号より)

滑らかな6気筒エンジンと重厚な走りが魅力のGTS

いっぽうのマカンGTSは、V6エンジンが生み出す滑らかなフィーリングがこのうえなく心地いいこのため、ひとたびマカンGTSに触れると、ベースグレードのマカンに乗り換えたとき、それまでほとんど感じなかった4気筒エンジンのかすかなバイブレーションを意識させられるようになって、軽い失望を覚えるほど。

しかもマカンGTSのV6エンジンはただひたすらスムーズというよりは、精緻なメカニズムが滑らかに回転する感触を積極的に伝えるタイプで、その鼓動に耳を澄ましているだけでうっとりしてしまう。この上質な回転フィーリングは、やはり6気筒エンジンならではのものといえる。

しかも、このエンジンが生み出すパフォーマンスがすさまじい。その出力特性は、ボトムエンドではやや穏やかに感じられるものの、回転を上げるに連れてパワーがリニアに上昇。レッドゾーンが始まる6800rpmに向けて出力が一直線に立ち上がっていくというもの。おかげで、まるでスポーツカーに積まれている高回転型ユニットを彷彿とさせるドラマ性を堪能できるのだ。

画像: マカンとマカンGTS(前)のキャラクターは明確でそれぞれの良さがある。

マカンとマカンGTS(前)のキャラクターは明確でそれぞれの良さがある。

もっとも、いくら低回転域のパフォーマンスが相対的に低く感じられるとはいえ、550Nmの最大トルクは1900rpmの低回転から発揮されるため、コーナリングの途中で深いバンプに出くわすと瞬間的にトラクションコントロールが作動することもしばしば。

ちなみに、同じバンプをマカンで通過してもトラクションコントロールは一切作動しなかったので、パフォーマンスの差は歴然としている。つまり、ドライバーはV6の滑らかな感触にだまされているだけで、実際にはとてつもないトルクを発揮しているのだ。

この大トルクを生かしてさらにコーナリングを味わうと、滑りやすい路面では後から押される感触が徐々に強まっていき、最終的にはハンドルを少し戻したくなるくらいニュートラルステアの傾向を示すようになる。この感覚もまた、ベーシックなマカンでは味わえなかったものである。

ただし、さすがにノーズにV6ユニットを積んでいるせいか、はたまたパワーステアリングの設定がマカンよりも重めになっているためか、マカンGTSの身のこなしはマカンほど軽快には感じられなかった。よくいえば、どっしりと安定しているとなるし、反対に悪くいえばやや鈍重ということになるだろう。ただし、エアサスペンションを標準装備するマカンGTSは、路面からのショックは余すところなく吸収してくれるのに、ダンピングはむしろマカンよりも強力。このため前述したバンプでは、マカンと違って上下動を1周期で抑え込む強靱さを示してくれた。

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