A5クーペとA4アバントのいいとこ取り
これまでA3スポーツバックしか知らなかった私は、イタリアのフローレンスでA5スポーツバックと初めて対面して不思議に思った。「これはハッチゲートを持った4ドアクーペではないか!?」と。もっともアウディはスポーツバックを「よりスポーティでダイナミックなアバント」と言っているから、たしかに不思議なことではないが。
しかしこのスタイルを見れば、やはりA5スポーツバックはメルセデスCLSのような4ドアクーペの潜在顧客まで取り込もうと狙っているような気がする。いずれにせよ、アウディはこのモデルでニッチ市場を目指しているのは間違いがない。
空港から借り出したのは2.0TFSIエンジン搭載のクワトロ仕様だった。A5スポーツバックはそのモデル名とスタイリッシュなデザインからベースはA5クーペと想像してしまうが、全長4711mmとホイールベース2810mmを見れば、むしろA4アバントに近いことがわかる。A4アバントの高さを50mm低くして、幅を30mm広げ、クーペ風のルーフとそれに続くゲートを組み合わせてできあがったのがA5スポーツバックというわけだ。
フレームレスのサイドウインドウとシャープなグリーンハウスは、アバントよりもずっとスタイリッシュでスポーティ、さらにパーソナルユースな雰囲気を漂わせている。また、低く長いのでCd値は0.29とA4アバントやセダンより1小さくなっている。
インテリアはクーペ譲りだが、独自のデザインが与えられている。しかし、一目でわかるほどの大きな違いはない。一時はもてはやされたMMI(マルチメディアインターフェイス)だがコントロールダイヤル周辺にスイッチがこれほど並んでしまうと、やはり目線を落とさねばならない。聞くところによるとニューA8のダイヤルはダッシュボードに移動するという。またナビモニターもそろそろ6.5インチから卒業しないと他に追い越されてしまう。もっとも、人間工学的には十分に熟慮された完成度と美しさが同居するコクピットデザインではある。
ところで、クーペ風のルーフによって低められた後席の空間だが、身長170cmの私が座った感じでは全く狭くはなく、ヘッドルームも十分だ。さらにクーペよりも長いホイールベースのために足元も広い。これならば子供はもちろん、標準的な身長の日本人ならフル4シーターとして十分に使うことができる。
また大きなリアゲートを開けるとリアシートのバックレストを立てた状態で480L、そしてフラットにするとリアの荷物室は980Lにまで拡大する。また開口部も幅1mと広く、トランクの敷居の高さも680mmとA4アバントとは50mmしか違わないので、重い荷物の積み下ろしもそう苦労はしない。