ボルボといえばステーションワゴンやSUVのイメージが強いが、このところ「ボルボのセダンは美しくてカッコいい」と評価が高まっているという。では最新の「ボルボのセダン」とはどんなクルマなのか。スウェディッシュセダンはドイツのプレミアムセダンとどう違うのか。S90 B6 AWD インスクリプションとS60 B5 Rデザインの試乗をとおして検証してみた。(Motor Magazine 2022年5月号より)

ソリッドな乗り心地の「Rデザイン」のS60

そうした懐の深さを持つS90とは対照的に、潔いくらい明確なキャラクターに仕上げられていたのが、もう1台のS60 B5 Rデザインだった。

Rデザインの名が与えられたS60は専用のスポーツサスペンションを装備しているため、乗り心地はインスクリプションのS90より格段にソリッド。ただし、ボディ剛性がしっかりと確保されているうえに、タイヤとサスペンションのマッチングがいいので、このソリッドな感触が少しもイヤとは思えなかった。

この強靱な足まわりを生かしたワインディングロードでの走りは痛快そのもの。ブレーキングやハンドル操作に対するボディの動きが小さく、コーナーに進入する際に瞬時に姿勢が決まるうえ、コーナーに入ってからも安定したハンドリングを示し続けてくれるので、小気味のいいスポーツドライビングを満喫できるのだ。

絶対的なコーナリング性能は、おそらくS90と同等だろうが、同じミシュランでも1段階コンフォート寄りのプライマシー4というタイヤでこの性能を引き出しているところに、Rデザインの真骨頂が表れているような気がする。

このタイヤのおかげもあって、S60は一般道でもゴツゴツ感のいなし方がうまく、スポーティなハンドリングの割には快適性が高い。ただし、高速道路では路面の細かい上下動も正確に伝える傾向が強くなり、ボディの動きがややせわしなく感じられた。

画像: 専用装備を採用し、よりスポーティなS60 Rデザイン。

専用装備を採用し、よりスポーティなS60 Rデザイン。

ロードノイズの侵入も大きめだったが、いずれもワインディングロードでの走りを考えれば許容できる範囲。それ以上に、ボルボがここまで割り切ったスポーツセダンを作り上げたことが驚きでもあり、また新鮮にも感じられた。

試乗車のパワートレーンは、S90用と基本的に同じマイルドハイブリッド付きの2L 4気筒エンジンだが、B5と呼ばれるこちらのグレードはターボチャージャーのみでスーパーチャージャーを備えていない。このため、最高出力はマイナス50psの 250ps、 最大トルクはマイナス70Nmの350Nmとなるものの、絶対的な動力性能は十分以上というか、むしろS90より瞬発力は優れているように感じられた。

前席の居住性は、S90まで幅方向の余裕はないが、個人的にはほどよく身体にフィットする心地いい広さと感じた。後席のニールームも同様で、S90に比べればいくぶん狭いものの、こちらも十分なスペース。ただし、後席ヘッドルームは限定的で、身長180cm前後だと頭が天井にあたる恐れがあるだろう。その意味でいえば、後席に大切なゲストを迎える機会の多いユーザーはS90を選んだほうが無難かもしれない。

基本的に同じデザイン言語が用いられているS90とS60だが、実際に見比べた際の印象はずいぶんと異なる。たとえばリアウインドウ付近のラインは、S90の方が傾斜が緩やかで、ボディサイドから見るとさらに伸びやかに思える。

また、ショルダー部を貫くラインは水平に伸びきっており、S90の風格を強調するのに役立っている。これがS60ではリアウインドウの下降する傾斜が強く、伸びやかなS90とは対照的に軽快感が漂う。ノーズ先端からボディの中ほどまで水平に伸ばされたショルダー部のラインが、リアドアの途中から跳ね上げるようにして上昇している点も、S60の軽快さを強調している。S90とS60の立ち位置の違いは、このようにして表現されているといえるだろう。

画像: ノーズ先端からボディの中ほどまで伸ばされたショルダー部のラインがリアドアの途中から跳ね上がるように上昇。(S60)

ノーズ先端からボディの中ほどまで伸ばされたショルダー部のラインがリアドアの途中から跳ね上がるように上昇。(S60)

そうしたエクステリアの違いに比べると、インテリアのデザインはS90とS60でそれほど大きくないような気がする。

今回の試乗車は、S90がインスクリプションでS60がRデザインとトリムが異なっていたため、インテリアに用いられている素材やカラーも対照的で、そこから受ける印象もずいぶん異なるが、スイッチ類を極力減らしたダッシュボードまわりは見た目がいかにもシンプルで、北欧家具に通ずるデザイン性が感じられる。いずれも使われている素材の質感が高く、またひとつひとつのパーツがていねいに作り込まれている点も印象的で、このインテリア欲しさにボルボを選ぶファンがいても不思議ではないくらいだ。

S90を筆頭とする新世代の製品群が2017年に世に出て以降、ボルボはセールス面やブランドイメージの面で大きな成功を収めてきたが、その大きな理由が優れたデザイン性にあることはまず間違いのないところ。そして、その美しいデザインの出発点がショーカーのコンセプトクーペにあり、この思想をもっとも明確に受け継いでいるのがS90とS60の2台であることは、ここまで論じてきたとおりである。

なるほど、販売台数の面ではいまやSUVのXCシリーズがSシリーズを凌駕しているが、Sシリーズでデザインの美しさをしっかり磨き上げたからこそ、それをSUVに応用したXCシリーズが大きな成功を収めているとも考えられる。その意味でいえば、現在ボルボが手にしている成功は、すべてこのSシリーズのデザインが礎になっているといっても過言ではなかろう。(文:大谷達也/写真:井上雅行)

ハンズフリーでさまざまな機能操作が可能なGoogleアシスタントを搭載

試乗車のS90には、2021年秋から導入が始まったAndroidベースのインフォテインメントシステムが搭載されていたのでさっそく試してみた。音声認識の確度は高く、私が口にした言葉を誤認することは基本的になかった。話の意味を理解する柔軟性にも優れ、「OK Google、近くのガソリンスタンドは?」と問いかけると、写真のような候補が表示された。最新の施設を確実に検索できる点もオンラインシステムのメリット。対応する機能は基本的にセンターディスプレイで操作できるものとなる。空調のオンオフや温度設定も可能だ。

画像: クルマに話しかけると発した言葉がディスプレイに表示され、施設などを検索した場合は地図とともに候補が表示される。

クルマに話しかけると発した言葉がディスプレイに表示され、施設などを検索した場合は地図とともに候補が表示される。

ボルボ S90 B6 AWDインスクリプション 主要諸元

●全長×全幅×全高:4970×1890×1445mm
●ホイールベース:2940mm
●車両重量:1920kg<エアサスペンション装着時1940kg>
●エンジン:直4 DOHCターボ+電動スーパーチャージャー+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:220kW(300ps)/5400rpm
●最大トルク:420Nm/2100-4800rpm
●モーター最高出力:10kW/3000rpm
●モーター最大トルク:40Nm/2250rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:11.0km/L
●タイヤサイズ:255/40R19
●車両価格(税込):894万円

ボルボ S60 B5 Rデザイン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4760×1850×1435mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:1730kg
●エンジン:直4 DOHCターボ+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:184kW(250ps)/5400-5700rpm
●最大トルク:350Nm/1800-4800rpm
●モーター最高出力:10kW/3000rpm
●モーター最大トルク:40Nm/2250rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:13.7km/L
●タイヤサイズ:235/45R18
●車両価格(税込):624万円

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