ハイブリッドに日産の「eーPOWER」を使わなかった理由は?
まずは、ルノー独自のハイブリッドシステム「E-TECH HYBRID(Eテック ハイブリッド)」から説明しよう。走りを理解する上でも、重要なポイントとなるからだ。
ルノーは日産とアライアンスを組んでいるから、日産のパワートレーンを使うことができる。ならば、日産のハイブリッド「eパワー(e-POWER)」を使えば良いのにと思ったのだが、なぜルノーはオリジナルのハイブリッドにこだわったのだろうか?
ルノー・ジャポンの担当者は「将来、市場がすべてEVになるかもしれませんが、その間を埋めるものとしてハイブリッドが必要だと考えています。ですが、100km/h以上の高速域を日常的に使う欧州では、高速域が苦手なeパワーは適さないのです。また、アクセル操作にダイレクトに反応するフィーリングも求められます」と説明する。
具体的に言えば、現在のディーゼルエンジンの代替としてのパワートレーンが必要とされている。それにはeパワーでは物足りない。それを上回るものとして「Eテック ハイブリッド」が開発されたというのだ。
Eテック ハイブリッドの構成は、1.6Lの自然吸気ガソリンエンジン(最高出力94ps/最大トルク148Nm)に、駆動用モーター(49ps/205Nm)とHSGと呼ばれるハイボルテージ スターター&ジェネレーター(20ps/50Nm)という2つのモーターをドッグクラッチマルチモードATでつなげるというものだ。変速機はエンジン側に4速、モーター側に2速あり、12通りの組み合わせができる。具体的には、2速と4速を掛け合わせた8速に、2速と4速を独立して使う6速をプラスする。合計では14速になるが、同じギヤ比のものが2つあるため、使えるのは12通りになる。
ドッグクラッチは、モータースポーツではよく使われており、効率は良いのだが、言わばシンクロ機能のないマニュアルミッションのようなものなので、変速ショックが大きいという弱点がある。そこで、Eテック ハイブリッドでは、HSGでエンジンの回転数を、駆動用モーターで車軸側の回転数を調整して、各ギヤの回転差を吸収してしまうというのだ。回転差がなくなればシンクロなしでもスムーズに、そしてロスなく変速ができる。これはきわめて斬新な手法と言えるだろう。