半導体不足の影響で生産立ち上げが遅れていた新型ポロGTIに、本国ドイツでようやく試乗する機会を得た。現行最終モデルとなるポロGTIに試乗すると、ゴルフGTIに引けを取らない印象を受けた。(Motor Magazine2022年6月号より)

最高出力は200psから207psへアップしたポロGTI

2017年にMQB-A0をベースに誕生したフォルクスワーゲン ポロは、2021年春にフェイスリフトを受けて、欧州を中心に出荷が始まった。しかし、ほぼ同時に発表されたポロGTIは半導体不足の余波を受けて生産の立上げが遅れ、試乗のチャンスも巡って来なかった。それでも、ここにきてようやく試乗の機会が訪れた。

フェイスリフトゆえにサイズは従来モデルと変化はない。ただしエクステリアデザインはグリル下方の赤いGTIラインと並行して走るLED、IQマトリックスヘッドライト(オプション)、そしてハニカムラジエータグリルの左右に2個のLEDドライビングライト、ブラック仕上げのドアミラー、後方に回るとトランクリッドまで広がったLEDテールライト、さらに真っ赤なブレーキキャリパーがスポーツムードを盛り上げる。

インテリアはインストルメントパネルがゴルフGTIに準じてデジタル化され、ドライバーの正面には標準で10.25インチのデジタルコクピット、ダッシュボードにはタッチ機能を持つ9.2インチディスプレイが並ぶ。インフォテイメントはフォルクスワーゲングループ最新のMIB3.1を搭載、OTAでソフトウェアのアップデート、そしてアップルカープレイかアンドロイドオートもスマートフォンを介してコンテンツや機能が使用可能だ。

パワートレーンは2L 4気筒TSI(EA888)で最高出力は200psから207psへ、最大トルクは320Nmと不変だが発生回転域は1500〜4500rpm(従来は1500〜4350rpm)と広範囲になった。その結果0→100km/hの加速がコンマ2秒速くなり6.5秒、最高速度は236km/hから240km/hとなっている。

画像: エンジンの最高出力は7ps向上、最大トルクは不変だが1500〜4500rpmと広範囲で発生するようになった。

エンジンの最高出力は7ps向上、最大トルクは不変だが1500〜4500rpmと広範囲で発生するようになった。

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ゴルフGTIに引けを取らない内容

ゴルフGTIのシフトバイワイヤーギアセレクトスイッチと違い、長くて武骨だが操作感のあるDCT(DSG)レバーをDにセットしてスタート。走り出して7psのパワーアップは直ぐには感じられない。しかし低回転域からのトルクの立ち上がりが明らかで、さらに回転の滑らかさは旧モデルよりも改善されていた。

またDCTのシフトフィールはクイックでスムーズになっている。コラムタイプのEPS(電動パワステ)にもかかわらずステアフィールは自然で、路面からの情報も確かに伝わり、スポーティで軽快なハンドリングを見せてくれる。

またタイトコーナーでアクセルペダルを踏み込んでも、標準装備の電子制御デファレンシャル(XDS)が前輪に掛かるパワーをスムーズにコントロールしてアンダーステアを出させない。一方アウトバーンにおいて180km/h付近を維持しても、安定したハイスピードツーリングが可能だ。

画像: GTI伝統の赤いステッチとチェック柄のスポーツシートは不変だがインストルメントパネルはデジタル化された。

GTI伝統の赤いステッチとチェック柄のスポーツシートは不変だがインストルメントパネルはデジタル化された。

ADAS(運転支援システム)も充実しており、オプションのIQトラベルアシストを装備すればレーダーセンサーとカメラによって前方を監視、クルーズコントロールでは車線はもちろん地図データ、GPS座標、制限速度、交差点、ラウンドアバウトなどを検知しながら、一時的な手放しを許すレベル3に近い安全快適ドライブを210km/hまで可能にする。

当然ながらステアリングホイールにセンサーが装備され、手放しを長く続けばウォーニングが働く。また標準装備でもデパーチャーウォーニングや自転車/歩行者の検知による緊急ブレーキ、追突防止緊急ブレーキ、さらにドライバーの疲労を注意するアテンションアシストと豊富な安全システムが用意されている。

ニューポロGTIはまさにホットハッチの魅力をフル装備したモデルで、もしかするとゴルフGTIの存在を脅かすかもしれないと思ったほど。しかし、残念ながらフォルクスワーゲンの電動化戦略によりポロGTIはこの世代で終焉を迎える。

ドイツ国内ではベースモデルの価格3万ユーロ(約395万円、19%の付加価値税込み)ですでに予約発注を始められているが、日本での発売日や価格はこの原稿を書いている4月(※)の時点で発表されていない。(文:木村好宏/写真:アクセル・ヴィーダーマン、キムラ・オフィス)
※:本記事公開時(2022年5月17日)においても、まだ発表されていない。

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