同じ2.4Lエンジンでも走りの方向性は大きく違う
さて、もう台が「レヴォーグ」。こちらはスポーツツアラーを謳うワゴンだ。これまでレヴォーグは1.8Lターボのみが搭載されていたが、WRX S4と同じエンジンが搭載された「STI スポーツR EX」が追加された。
スバルグローバルプラットフォームも同じ、パワーユニットも同じ。そして同じグレード名ともなれば、ボディ形が違うだけ?と思うが、そもそもWRX S4とレヴォーグは性格が異なる。
レヴォーグはグランドツアラーであり、WRX S4ほど尖ったキャラではない。一番わかりやすいのは、装着タイヤの違いだ。WRX S4はスポーツタイヤを履くが、レヴォーグはエコタイヤを装着しているのだ。
インテリアは、基本的にWRX S4と同じ。クルマのキャラクターが違うのに、ここは同じなの?と思ったが、どうやら「STIスポーツR EX」として共通化している。ただ、レヴォーグにはレカロシートは装備されない。
40:20:40分割可倒式リアシートが採用され、ラゲッジに応じてそれぞれ独自に倒すことができる。また、ハンズフリーオープンパワーリアゲートも採用されるなど、ワゴンとしての利便性も高い。
さて、WRX S4から乗り換えるとハンドルの操舵感も、WRX S4はずっしりしたものなのに対して、レヴォーグはやや軽めで取り回しもしやすい。また、電子制御ダンパーも各ドライブモードでWRX S4よりも全般的に減衰力が低く設定されている。グランドツーリングカーらしく、肩の力を抜いてドライブできる。
面白いもので、同じエンジンを搭載していながら、レヴォーグは積極的にスピードを出したり、コーナーを攻めようという気にはならず、トルクを味わいながらゆったりのんびり走りたくなる。とはいえ、スポーティに走るポテンシャルは十分に備えている。そして、コーナリングの動きがものすごく気持ち良い。
ドライバーを中心に旋回しているような感覚の素直な回頭性で、しっとりと、サスペンションの動きと同調しながらタイヤがたわんでいくような動き。リアシートの同乗者はもちろん、たとえば、ラゲッジルームに乗るワンコにまで優しい乗り味をイメージさせる。
ちなみに、WRX S4は操舵に対する動きがクイックで、ほぼロールもせずに瞬時に向きが変わるため、このような、ヨーの発生からロールして向きが変わっていくという、過渡領域を味わう間もない。やはり、両者はとても明確に性格が分けられており、それでいて、どちらもスバルとしての共通した乗り味があり、クルマ作りの上手さが感じられる。
試乗日はあいにくの雨。でも、その中でも高い安定性、安心感を確認できたから、恵みの雨だったのかもしれない。最近、ドイツ車からの乗り換えが増えたそうだが、納得だ。最近のスバル、走りがすごく洗練されている。(文:佐藤久実/写真:原田 淳)
スバル WRX S4 STIスポーツR EX 主要諸元
●全長×全幅×全高:4670×1825×1465mm
●ホイールベース:2675mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:対4DOHCターボ
●総排気量:2387cc
●最高出力:202kW(275ps)/5600rpm
●最大トルク:375Nm(38.2kgm)/2000-4800rpm
●トランスミッション:CVT(スバルパフォーマンストランスミッション)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●WLTCモード燃費:10.8km/L
●タイヤサイズ:245/40R18
●車両価格(税込):477万4000円
スバル レヴォーグ STIスポーツR EX 主要諸元
●全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1570kg
●エンジン:対4DOHCターボ
●総排気量:2387cc
●最高出力:202kW(275ps)/5600rpm
●最大トルク:375Nm(38.2kgm)/2000-4800rpm
●トランスミッション:CVT(スバルパフォーマンストランスミッション)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●WLTCモード燃費:11.0km/L
●タイヤサイズ:225/45R18
●車両価格(税込):477万4000円