少しだけ大きくなったボディにホンダ史上最大級の空間性能を詰め込みながら、シンプルデザインで優れた機能性をアピールする新型ステップワゴン。初試乗の舞台は一般道オンリーだったけれど、洗練された走り味と類まれな居心地の良さ、便利な機能をチェックすることができた。

1、2、3列目のどこに座っても、それぞれに心地よい

デザインそのものが退屈なわけではない。メッシュのエア吹き出し口など、目が留まるワンポイントも効果的に配置されている。10.2インチのディスプレイはむやみに存在感を主張しないが、運転席からの視認性は高い。スマートフォンなどの小物をポンと置いて置けるスペースも豊富だ。

画像: 全車に設定されるキャプテンシートは、中寄せの左右スライド機構が左シートで115mm、右シートで75mmとなる。前後方向は610~865mmのアジャストが可能だ。

全車に設定されるキャプテンシートは、中寄せの左右スライド機構が左シートで115mm、右シートで75mmとなる。前後方向は610~865mmのアジャストが可能だ。

運転席だけでなく、2列目3列目にも座ってみたが、それぞれにちょっと違ったお部屋感覚が感じられた。全車に標準装備される2列目キャプテンシートは前後左右にスライド可能で、ほどよくエグゼクティブ感覚が味わえる。座面の厚みが21mm増えた3列目シートは大人が座っても足もとや上下方向にゆとりがあるし、視界が高めなので「バスに乗ってる」気分を楽しめる。

なるほど確かに新型ステップワゴンは、どこに座ってもそれぞれに優れた機能性を備えた「お部屋感覚」が満喫できるミニバンだ。単に「史上最大」なだけでなく、乗る人すべてにとって「史上最良の空間性能」を提供しているように思えた。

非常に洗練された乗り味。車酔いも減りそう

ボディが大きくなったことで、キャビンの居心地は確かに良くなった。だがちょっと気になるのは、重量増によるさまざまな悪影響だろう。新型ステップワゴンは従来型に対してボディ剛性向上、安全装備の充実などに伴って、車両重量が70~80kgほど重くなっているが、たとえば操縦安定性や乗り心地が悪化してしまってはいないだろうか。

画像: サスペンションの動きもしなやかで、コーナリング姿勢は常に安定している印象だ。常に素直なハンドリングはドライバーが操って楽しいだけでなく、無駄な動きを減らし、車酔いを防ぐ効果も期待できるだろう。

サスペンションの動きもしなやかで、コーナリング姿勢は常に安定している印象だ。常に素直なハンドリングはドライバーが操って楽しいだけでなく、無駄な動きを減らし、車酔いを防ぐ効果も期待できるだろう。

だが実際に走らせてみると、それは杞憂だった。17インチを履くスパーダ プレミアムラインはややスポーティ寄りだが、標準の16インチタイヤ装着車ならエアーでもスパーダでも、非常に洗練された乗り心地を実現している。

サイドシルの断面大型化やスライドドア開口部への構造用接着剤の採用、リアスプリング取り付け部の剛性強化といった大小さまざまなポイントで、改良が施されているとのこと。おかげでバンピーな路面でも不快な振動やヨレる感覚はまったくない。

スムーズかつナチュラルな特性に成長したストロングハイブリッド

そしてもうひとつ、重量増による「速さ」への影響もやはり気になるところではある。新型ステップワゴンには先代と同じく1.5L 直列4気筒ターボエンジンと、2L直列4気筒ハイブリッド(e:HEV)ユニットの2タイプのパワートレーンが設定されているが、どちらもカタログ値はほぼ変わっていない。単純に考えれば、重さが増している分「不利」だと思う。

画像: 開発者によれば、新型ステップワゴンは数値上のスペックではなくドライバビリティの質の向上にこだわった、という。ちなみにe:HEVではエンジンの最大トルク発生回転数が500rpmほど下げられている。

開発者によれば、新型ステップワゴンは数値上のスペックではなくドライバビリティの質の向上にこだわった、という。ちなみにe:HEVではエンジンの最大トルク発生回転数が500rpmほど下げられている。

だが実際に走らせてみると、パワー不足、トルクの細さが気になることなどまったくなかった。それどころか、ターボもe:HEVも、圧倒的に洗練された印象に生まれ変わっている。アクセルワークと回転の上昇に対する加速感が非常にリニアで、操りやすい。

街乗りではどちらのパワートレーンでも、ストレスなく流れに乗り続けることが可能だ。さらに停止車両や右折車両を回避する時などに一瞬、速やかな加速が必要になる状況などでは、驚くほどスムーズにレスポンス良くスピードを上乗せしていける。とくにe:HEVはリニアかつ力強いトルク感が好印象だった。

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