ボルボ60/90シリーズのフラッグシップであるリチャージ プラグインハイブリッドが改良された。その特徴のひとつはバッテリー容量拡大によりEV走行距離を伸ばしたことだ。この改良はPHEV車にどんな効果をもたらすのか。EV走行を中心にレポートする。(Motor Magazine 2022年7月号より)

ワンペダルドライブ機構を初採用

2030年に全車BEV化を謳うボルボは、20年にいち早く全車電動化を終え、マイルドハイブリッド(MHEV)とプラグインハイブリッド(PHEV)を各モデルにラインナップ。2021年末にはBEVのC40リチャージ、2022年5月にはXC40のBEV版XC40リチャージと立て続けに発表し、目標に向かって歩み続けている。そんなボルボだが、既存のラインナップの中で、各モデルのフラッグシップとなるのがリチャージ プラグインハイブリッドだ。

画像: ファインナッパレザーの内装はブロンド/チャコールにピッチドオークウッドパネルという組み合わせだ。

ファインナッパレザーの内装はブロンド/チャコールにピッチドオークウッドパネルという組み合わせだ。

このリチャージ プラグインハイブリッドだが、2022年1月にSPAプラットフォーム(60/90シリーズに採用)車が大幅改良された。改良の内容は、バッテリー容量の拡大、モーターの出力向上、そしてエンジンの仕様変更である。

まずバッテリーの容量だが、総電力量が11.6kWhから18.8kWhに増大された。これによりEV走行距離はV90の場合、従来比で約2倍の81kmに増えている。次にモーターだが、リアのモーター出力が従来の65kW/240Nmから107kW/309Nmへと大幅に強化された。エンジンはスーパーチャージャーを廃止し、CISG(クランクインテグレーテッドスタータージェネレーター)と呼ばれる小型モーターの出力を40kW/160Nmに向上させた。

さらに今回の試乗車であるV90には、アクセルペダルひとつで加減速ができるワンペダルドライブ機能が初採用された。これはより効率的な回生ブレーキを得るために導入されたのだが、EV走行を重視するボルボならではである。

モーターのみのドライブ時の静粛性は、限りなくBEVに近い

試乗はほぼ満充電でスタート。まずはデフォルトの「ハイブリッド」モードで走り出したのだが、ボルボの場合はハイブリッドを選択していてもバッテリー容量が十分にある状態では積極的にEVで走るようになっているので走り出してもエンジンはかからない。

画像: 2L直4ターボエンジンは単体でも317ps/400Nmと十分なパワーを発生するがそこにモーターが加わる。

2L直4ターボエンジンは単体でも317ps/400Nmと十分なパワーを発生するがそこにモーターが加わる。

今回はこのEV走行を十分に堪能するため、途中から「ピュアモード」に切り替えた。さらにセンターディスプレイでクリープをオフに、シフトをBポジションへ入れて、ワンペダルドライブを設定した。アクセルペダルオフで回生ブレーキが効いて減速ができるワンペダルドライブだが、V90の場合はアクセルペダルだけで完全停止までできる。

乗り味は完全にBEVである。モーターの出力のみに頼っているにもかからず、想像していたよりも加速は力強い。そして滑らかに速度を上昇させていく。ワンペダルドライブによる減速もすごく自然で、コツをつかめば右足のコントロールだけでブレーキペダルを踏むよりもスムーズな減速が可能だ。今回はそのまま高速道路に乗り、合流もEVのまま行った。ちなみにピュアモードでも強い加速が必要な場合などアクセルペダルの踏み込み量に応じてエンジンは始動する。

そして何よりも驚いたのはEV走行時の静粛性の高さだ。BEVはエンジン音や排気音がしないため、そのぶんロードノイズや風切り音が気になることがある。V90はBEV専用車ではないが、遮音性が高く、EVモードで走っていても走行音が気にならなかった。EV走行を堪能していると、70kmと表示されていたEV走行可能距離は30kmまで減っていた。

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