もともとは、メルセデス・ベンツにおけるエントリーモデルという任を担っていたのがCクラス。現在では、よりコンパクトなシリーズが登場したことによって立ち位置は変化したものの、そのフォーマルかつプレミアムな存在意義は現在でも基本的に変わっていない。そこで今回はセダン、ステーションワゴンに加えて登場した新たなる「オールテレイン」の価値観に注目する。(Motor Magazine 2022年7月号より)

物理的なスイッチは整理されてすっきりしたインターフェイスに

前後バンパーやフェンダーアーチの造形、フロントグリルの装飾などで、たくましく堂々とした「ラギッド」な雰囲気を主張するオールテレインだが、インテリアの雰囲気に関しては、ベースとなったCクラスとの共用感が強い。

大型ディスプレイの採用が印象的なダッシュボード。Cクラスに共通する雰囲気。

ダッシュボードまわりでは、ドライバー前面とセンターパネル部分にレイアウトされた2面の大型ディスプレイ、角丸でなかなか自己主張が強いデザインのフェイスレベルのエアアウトレットが特徴的だろう。

ADASの高度化を筆頭に、増加の一途を辿る機能に対応した物理スイッチ数の増加を嫌い、このモデルでも多くの項目のプリセットなどをセンターディスプレイ内のアイコンを呼び出して行う仕組みになっている。また大型ディスプレイゆえアイコンサイズやその並びの間隔に余裕が大きく、この種のアイテムの中では扱いが容易な方であるのは幸いだ。

ちょっと戸惑ったのは、前席の調整方法だ。ドアトリム前方に座席のサイドビューを模したスイッチを配するのはメルセデス・ベンツの伝統と言える方式だが、以前のようにスイッチの該当部を動かす操作ができなくなり、該当箇所をタッチするだけのスイッチとしてしまった点は、せっかくのアイデアも半減という印象で惜しい。

満足できる動力性能と納得の行くフットワーク

4WDシステムの採用もあって、本革シートとパノラミックスライディングから成る「レザーエクスクルーシブパッケージ」をオプション装着したテスト車の重量は、ちょうど1.9トンとそれなりの重量級。

画像: 2LディーゼルターボエンジンはISGとの組み合わせで全域スムーズかつ力強い。

2LディーゼルターボエンジンはISGとの組み合わせで全域スムーズかつ力強い。

しかし、実際にはすでに1800rpmから440Nmの最大トルクを発するエンジンとワイドなレンジをカバーする9速AT、さらにスタータージェネレーターによるトルクサポートのお陰で、動きが緩慢という印象は微塵も受けることはない。

中でも、あくまで黒子的な働き具合でありながらスタータージェネレーターによるアシストパワーは意外に効果的だ。まず、静かでスムーズなアイドリングストップ状態からのエンジン再始動時の挙動が、いかにもプレミアムブランドに相応しいものである。

加えて、「そろそろキックダウンしてしまうのでは」と予想されるシーンでも、高いギアのまま思いのほか力強く速度を回復してくれるなど、違和感に繋がらない範囲で積極的に助っ人役を買って出てくれる感触を得られた場面が多かった。

ただ、兄貴分のEクラスオールテレインが実現させる秀逸な乗り味に、エアサスペンション採用の効果が少なからず表れているはずだと理解する人は、Cクラス オールテレインでその設定がない点に不安と不満を抱くかもしれない。

後編で記したように、確かにベースとなったステーションワゴンと子細に比較すれば、本来の「理想形」として設計されたであろうそちらに対して、オールテレインではより地上高を上げ、より大径で重いタイヤ&ホイールを履くことによる、言ってみれば「好ましからざる影響」が皆無であるとまでは言い切れない。

しかしそうした相対評価を別とすれば、十分に満足のできる動力性能と、こちらもメルセデス・ベンツの作品として大いに納得するに足るフットワークの仕上がりを備えている、というのもまた事実である。

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