Cセグメントハッチバックのなかでも人気のドイツと日本のライバル車。フランスの308と、それぞれのキャラクターはどう違うのか。日仏独の最新ディーゼルモデルを、乗り比べてみた。(Motor Magazine 2022年7月号より)

欧州勢は400万円オーバー。価格の差はやはり大きい

ここでは新型プジョー308の実力を、ライバルと目されるモデル等と比較して見極めたい。数ある308のラインナップから編集部が選んだのは、ディーゼルエンジン搭載の308GT ブルーHDiである。排気量1.5Lのディーゼルターボは130psと300Nmを発生。

車両価格は396万9000円。新型308はどれも装備が豊富だが、GTは最新の運転支援機能に加え、コネクテッド式のナビゲーションまで標準装備。そのため、オプション装備は1万670円のETC車載器のみという潔さ。総額は397万96700円とギリギリで400万円内に収まっている。

画像: 走りの楽しさとスポーティさを兼ね備えるハッチック。(写真:左からマツダ3 ファストバックXD ブラックとーエディション、ゴルフTDI Rライン、308GT ブルーHDi)

走りの楽しさとスポーティさを兼ね備えるハッチック。(写真:左からマツダ3 ファストバックXD ブラックとーエディション、ゴルフTDI Rライン、308GT ブルーHDi)

そのライバルとして登場願ったのは、輸入車Cセグメントの定番中の定番であるフォルクスワーゲン ゴルフ。なかでもディーゼル対決ということでTDIをチョイスした。エンジン排気量は308より約500cc大きい2Lで、ターボチャージャーにより3台中随一の150psと360Nmを生み出す。

試乗車は、TDIの中でもスポーティなRラインというグレードで、スポーツサスペンション、17インチアルミホイール、スポーツシート、レザーステアリングホイールなどが標準装備される。

車両価格は408万8000円だが、ETC車載器が標準装備となるかわりに、ナビゲーションシステムを含むディスカバープロパッケージ(19万8000円)、LEDマトリックスヘッドライトや駐車支援システムを盛り込んだテクノロジーパッケージ(17万6000円)、18インチアルミホイール(6万6000円)、メタリックカラー(3万3000円)などのオプションが装着され、車両総額は459万7300円となった。

残る1台はディーゼルエンジンを搭載した、唯一の和製Cセグメントハッチバックといっても過言ではないマツダ3をチョイスした。スカイアクティブDと名付けられたエンジンは、308とゴルフの中間にあたる排気量1.8L。

ただし、その最高出力は308と同じ130psで、最大トルクは308に一歩及ばない270Nm。また308が8速AT、ゴルフが7速DCTとなるのに対し、マツダ3が6速ATとなることもスペック的には一歩譲る点だ。

ただし価格的には有利で、試乗車の車両価格は4WDでありながら307万4500円と、ライバルの2台よりおよそ100万円ほど安い。それでも先進運転支援機能はひととおり搭載されているほか、ナビゲーションシステムも専用SDカード(5万3899円)を購入すれば使用可能になるので、これらまで含んだオプション装備の価格は25万6279円に過ぎず、車両総額は333万円779円となる。

したがって308との価格差は65万円弱、ゴルフにいたっては126万円ほどと大きな差がついている。

洗練された足まわりで快適な乗り心地の日本代表:マツダ3

そんなマツダ3が洗練された走りを披露したことは、私にとって嬉しい驚きだった。まずは足まわりの設定がソフト傾向で、スムーズかつ快適な乗り心地を味わえたことが印象的だった。新型308のようにサスペンションストロークのあるところからソリッドさを増すことなく、かなりの部分までしなやかさを残しているタイプだ。

画像: マツダ3 ファストバックXD ブラックトーンエディション。グロスブラックのドアミラー、18インチアルミホイールなどの特別装備を採用する。

マツダ3 ファストバックXD ブラックトーンエディション。グロスブラックのドアミラー、18インチアルミホイールなどの特別装備を採用する。

マツダ3がデビューした当時は、サスペンションがスムーズにストロークする印象が薄く、足まわりが突っ張っているかのような乗り心地で決して快適とは言えなかったが、そこからの進化はまさに目を見張るばかり。最近試乗したマツダ車のなかでも、快適性ではトップクラスに位置しているように思われた。

それゆえに、ワインディングロードでの走りは機敏さに欠けていたというのが、私の偽らざる印象である。「それが悪い」と指摘するつもりは毛頭ない。むしろ、これだけ静かで快適なクルマで、ハンドリングだけシャープにしようとするほうが無理がある。

また、ソフト傾向の足まわりだからコーナリングが妙に鈍かったり、不安定な姿勢に陥ったりするわけでもない。ハンドリングは正確でスタビリティも高いが、スポーティな感触や刺激は抑えられているのがマツダ3のシャシだといえる。

エンジンの方向性も、基本的にはスムーズで静かなエンジンだけれど、スペックに表れているとおりトルク感は決して豊富とはいえず、パンチに欠ける。つまり「良質だけれど刺激は薄い」パワートレーンだったのである。

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