Cセグメントハッチバックのなかでも人気のドイツと日本のライバル車。フランスの308と、それぞれのキャラクターはどう違うのか。日仏独の最新ディーゼルモデルを、乗り比べてみた。(Motor Magazine 2022年7月号より)

驚くほどスポーティでそして刺激的なドイツ代表:ゴルフ

対照的に刺激のカタマリとまで思えたのがゴルフTDIだった。同じTDIでも、以前試乗したアクティブアドバンスというグレードは、17インチタイヤを履いており乗り心地が快適志向で、ハンドリングもおっとりとしていた。

画像: ゴルフTDI Rライン。ツインドージングシステムを初採用した最新世代「TDI」エンジンを搭載する。

ゴルフTDI Rライン。ツインドージングシステムを初採用した最新世代「TDI」エンジンを搭載する。

ところがRラインは「これが同じゴルフTDI?」と思えるほど、足まわりからは細かな振動が始終伝わって、ゴーッと車内に響くロードノイズも耳障り。それでも、好意的に解釈すれば「Rラインらしいスポーティな味わい」と言えなくもないのだが・・・。

一方でハンドルの操作感は軽めで、切り始めのゲインも高めなため、コーナリングでは「ちょっと操舵しただけで鋭敏に曲がり始める」感触を味わえる。ハンドリングのシャープさに足まわりが追いついていけないのか、荒れた路面でのコーナリングでは瞬間的にタイヤのグリップが薄れたり、わずかながらボディが揺さぶられる症状を示すことがあった。なにがあっても巌のようにドッシリとしていた歴代ゴルフとは、いささか異なる挙動といえる。

エンジンも実に活発で、最高出力はマツダ3と20psしか差がないものの、360Nmの最大トルク(マツダ3は270Nm)が利いて、中低速域でもアクセルペダルを踏み込んだ瞬間にグイッと加速Gが素早く立ち上がる様子は驚くほどスポーティ。

路面の荒れたワインディングロードではトラクションが追いつかず、グリップを失いかけることもあるほどだった。そんな走りは洗練されていないと言えるし、ヤンチャで楽しいとも感じる。往年のホットハッチを思い起こすようなキャラクターだ。

快適性とダイナミックな走りを両立したフランス代表:308

では、主役である308の走りはどうだったのか?サスペンションの味付けが、快適性とダイナミックな走りを両立させようとするもので、快適性に限っていえば、マツダ3とゴルフTDIの中間か、ややマツダ3寄りといって間違いない。

画像: 走りの楽しさ、快適性、質感とバランスが取れているプジョー 308GT ブルーHDi(左)。マツダ3 ファストバックXD ブラックトーンエディション。

走りの楽しさ、快適性、質感とバランスが取れているプジョー 308GT ブルーHDi(左)。マツダ3 ファストバックXD ブラックトーンエディション。

ただし、ワインディングロードでは「ストローク初期のしなやかさ」がロードホールディング性の改善に結びつき、荒れた路面でもゴルフTDIのように瞬間的にグリップが失われることはない。それでいて、ハンドリングの俊敏性はマツダ3を大きく引き離し、ゴルフTDIに匹敵するのだから、2台のいいとこ取りをしたようなキャラクターと言えるだろう。

そうした積極的なドライビングを楽しむ際には、iコックピットの小径ハンドルが大きくものをいう。今回はタイトコーナーが連続するワインディングロードで試乗したため、この効果は顕著に感じられた。まるでクルマを手のひらにすっぽりと収めているような一体感を味わいながら、軽快な走りを満喫できたのである。

キャビンの作り込みも、ドライバーを深い満足感に浸してくれる。メーター周りのデザインは斬新で、自分が新しいクルマに乗っていることを強く実感させられる。これに比べると、マツダ3はよく練られているものの、それだけに平凡。逆にデジタル化を意識しすぎたゴルフTDIは、操作性や熟成が不十分に思われた。

3台の評価は、どの視点から捉えるかによって変わってくる。快適性や静粛性を重視すればマツダ3が有力だが、それだけに刺激感はやや物足りない。ゴルフTDI Rラインが3台中でもっともヤンチャだったのは実に意外だったが、刺激性を追求するあまり洗練さに欠けている点は残念だった。

しかし、308はこの刺激感と洗練さをとてもうまくバランスさせていると思う。それは内外装のデザインやクオリティ感についても同様で、3台のなかで、もっとも深い所有感を味わえるのではないか。

ゴルフTDIより50万円(オプション込)ほど安く、マツダ3と70万円差(オプション込)に抑えた価格設定も絶妙。私にとって新型308は、やはり明確な弱点の見当たらないCセグメントハッチバックなのである。(文:大谷達也/写真:井上雅行、佐藤正巳)

マツダ3 ファストバックXD ブラックトーンエディション 主要諸元

●全長×全幅×全高:4460×1795×1440mm
●ホイールベース:2725mm
●車両重量:1480kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1756cc
●最高出力:95kW(130ps)/4000rpm
●最大トルク:270Nm/1600-2600rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・48L
●WLTCモード燃費:20.0km/L
●タイヤサイズ:215/45R18
●車両価格(税込):307万4500円

フォルクスワーゲン ゴルフTDI Rライン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4295×1790×1475mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1460kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1968cc
●最高出力:110kW(150ps)/3000-4200rpm
●最大トルク:360Nm/1600-2750rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:軽油・51L
●WLTCモード燃費:20.0km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●車両価格(税込):408万8000円

プジョー308GT ブルーHDi 主要諸元

●全長×全幅×全高:4420×1850×1475mm
●ホイールベース:2680mm
●車両重量:1420kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1495cc
●最高出力:96kW(130ps)/3750rpm
●最大トルク:300Nm/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量: 軽油・53L
●WLTCモード燃費:21.6km/L
●タイヤサイズ:225/40R18
●車両価格(税込):396万9000円

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