プジョースポールの手になるハイスペック電動モデル
すごく魅力的なのに日本には導入されないモデルというのがある。その大半を占めるのが、刺さる人には強く深く突き刺さるのに多くの人には圏外だと判断されがちなクルマたちだ。508 プジョースポールエンジニアードは、その典型なのではないかと思う。
ベースになったのは日本にも上陸してる508 GTハイブリッド。それをモータースポーツ部門というべきプジョースポールが、スポーツモデルへと仕立てたものだ。過去にプジョーへ何度も栄冠をもたらしたプジョースポールは、お蔵入りにはなってしまったものの、かつてディーゼル+ハイブリッドの908ハイブリッド4というマシンを開発して2011年にテストまで漕ぎ着けたことがある。
この夏に実戦デビューが決まった2.6L V6ツインターボ+ハイブリッドの「9X9」は、すでに2019年に計画が発表されていた。その研究開発の過程で、電動システムをブースターとして使うスポーツモデルのアイデアが飛び出してきたのだとしても、何ら不思議はないだろう。
予想以上にエキサイティング。けれどプジョーらしさがある
まさか試乗できる機会が巡ってくるとは思ってもいなかったが、このクルマをじっくり眺めてみると、そのルックスからして魅力的だ。フロントバンパー下部の両脇のカナード、サイドスカート後端に立ち上がるフィン、リアバンパー下のディフューザーと、その左右の翼端板。専用の空力パーツを纏うのだが、少しもこれみよがしではなく、大人っぽい静かな迫力を漂わせている。
エアインテークやブレーキキャリパー、各部の鉤爪印の蛍光イエローがなければ、特別なモデルであることに気付かないかも知れない。けれどシートに腰を下ろすと、このクルマがどこを見ているのかが一発でわかる。専用のシートは彫りが深く、しかも明らかに低くマウントされているからだ。
搭載する内燃機関はGTハイブリッドの180psを200psまで引き上げたもので、フロントには通常と同じ110、リアには新設の113psのモーターを組み合わせている。システム全体では360ps/520Nmとなる。
これが予想以上にエキサイティングだった。エンジンはいかにもチューニングの高い4気筒エンジンらしい快いサウンドを聴かせながら気持ち良く素早く吹け上がって、それをモーターが力強く後押しする。スタートダッシュは強力だし、中間加速でも同様の押し出し感を伴ってグイグイ伸びていく。どこから踏んでも、たった360psには思えないくらい速いのだ。0→100km/hは5.2秒らしいが、もっと速いだろう、と感じたのはモーターの瞬発力とキックの強さによるものだろう。