トヨタとの共同開発ながら広範囲で垣間見えるスバルの主張
スバル初の量産バッテリー電気自動車(BEV)として、トヨタとの共同開発で生み出されたソルテラの車名はラテン語の「SOL(太陽)」と「TERRA(大地)」を組み合わせたものだ。環境問題への真摯な取り組みとSUVとしての走破性や冒険心の、ふたつのイメージがうまく重なる秀逸なネーミングだなというのが、それを聞いた時の第一印象である。
雪のクローズドコースでは味見していたそのソルテラを、今回は初めて一般道で試した。ルートは岐阜の郡上八幡から金沢まで。さて、その走りはいったいどのような仕上がりだったのか。
改めてクルマの概要を確認しておこう。このソルテラ、ハードウェアの基本部分をトヨタbZ4Xと共有するというだけでなく、企画、設計、評価なども両社、共同で進められた。スバルではe-Subaru Global Platform(e-SGP)と呼ぶ基本骨格の開発は、初期段階から両社が知見を持ち寄り議論しながら進められたというが、そこはSUVに関しては一家言あるスバルだけに、広範囲にそのこだわりが反映されたようだ。
たとえば、フロア下にリチウムイオンバッテリーを敷き詰めるレイアウトの関係もあり、4690mmの全長に対してホイールベースを2850mmと長く取りながらも最小回転半径を5.6mに抑えた小回り性や、210mmの最低地上高は、スバルが強く求めたところだったと聞く。
また、他のSUVモデルと同様に、悪路走破時の強い味方であるX-MODEも搭載されている。しかもなんと、トヨタ側でもこれを同じX-MODEとして採用しているのだ。
その上でソルテラは、まず外装デザインが専用になっている。実際、フロントマスクを見れば、明らかにスバル車である。また、ドライブモードにトヨタ側にはない「SPORT」が加わり、パドルによって回生の強さを変更することもできるなど、より能動的、積極的なドライビングを可能にする仕立てとされている。
ドライバビリティの良さに走り出してすぐに感心した
試乗したET-HSグレードは、前後に1基ずつの計2モーターを搭載するAWD。電気モーターの出力は前後ともに109psで、合計218psとなる。バッテリー容量は71.4kWhで、一充電航続距離は487km。ちなみにグレードは3タイプが用意されており、エントリーモデルであるET-SS(FWD)は一充電走行距離567kmを実現している。
室内に乗り込むと、新しいものに触れるワクワク感がさらに高まった。液晶メーターパネルを遠くに置き、ステアリングホイールの上からそれを覗くレイアウトは新鮮でありつつも視認性も十分。開放感ある上半身に対して、身体は高さのあるセンターコンソールなどのおかげで守られ感が強めなのは、着座位置が高めのクルマだけに、安心感に繋がっている。
乗り込んだ時、バッテリー残量を示すバーグラフはざっと6割くらいの位置にあった。残り走行距離は254kmと出ていたが、エアコンを入れると196kmに減った。苦手な暖房を行う冬場ならともかく、この季節にそれほど差が出るものか。気にしながら、いよいよ走り出す。
ロータリー式のシフトセレクターを回してDレンジに入れてアク セルペダルを踏み込んでいくと、ソルテラは意に反して飛び出したりすることなく、至極スムーズに発進する。このドライバビリティの良さがまず感心させられるところで、初めから電気駆動をしっかりモノにしていると感じた。どこから踏んでもしっかりトルクが出てきて力強く加速していくけれども、唐突感、違和感には繋がっていないのだ。
スイッチで「S Pedal Drive」を選べば、アクセルオフだけで回生による強い減速Gが出て、ほぼワンペダルでのドライブが可能なモードとなる。その制御もこなれたもので、アクセルオフで急に前につんのめるようなことはない。結局、一般道の走行中はほぼ、このモードで通せてしまった。