プジョー 3008 ハイブリッド4(2011年:日本未導入)
ハイブリッド車に関しては日本に少し遅れをとっているといった感のある欧州市場だが、フランスのプジョーが3008に市販乗用車としては初となるディーゼルハイブリッド車を設定して登場させた。前輪はディーゼルエンジンで、後輪はモーターで駆動するというクロスオーバー4WDモデルだ。
乗用車では世界初となるディーゼル ハイブリッド車「3008 ハイブリッド4」をプジョーが発売すると聞いたときは、にわかには信じがたかった。
というのも、ガソリン車と比べて苦手領域の少ないディーゼルをハイブリッド化しても、そう低燃費になると思えなかったし、ガソリン車と比べて15〜20%ほど車両価格が高いディーゼル車をハイブリッド化したら、さらに高くつきそうなのは間違いないからだ。
しかしプジョーは(というかグループPSAは)、この3008 ハイブリッド4で、同等の性能を持つベース車と比べて車両価格を2000ユーロ(編集部註:当時のレートで約20万円)高に抑えつつ、CO2排出量を欧州各国のエコカー減税の対象となる100g/km以下に抑えることに成功したのだ。
新開発されたメカニズムは、通常のエンジン車のリアアクスルにハイブリッド機構をアドオンする、シンプルかつユニークな方式だった。
従来モデル同様、フロントに搭載される2L 直4ディーゼルターボエンジンは最高出力163psと最大トルク300Nmを発生。これで前輪を駆動する。加えて、リアアクスル上に最高出力37psと最大トルク200Nmを発生する電気モーターと電子制御ユニットを搭載し、必要に応じて後輪も駆動する。
いわゆるパラレル ハイブリッドとなるのだが、発進時はモーターのみだから後輪駆動となり、エンジンのみで走るときは前輪駆動、そして両方が稼働しているときは4WDになるという、ユニークなシステムだ。ちなみに、システム総合の最高出力は200ps、最大トルクは500Nmを発生する。公称の0→100km/h加速は、ガソリンモデルの8.9秒に対し8.5秒とされている。
その走りっぷりは、エコカーらしからぬ?ものだった
しかし、このクルマで特筆すべき点は何といってもその走りっぷりだろう。プジョーらしいフットワークの良さや、しなやかな乗り味はベース車の3008と変わらない。
プジョーの技術者いわく「低燃費のエコカーでも、走りでエコカーを主張するつもりはない」と言うだけあって、エコカーという響きから想像するスローな走りではなかった。むしろ、普段はパワフルでスポーティな走りを堪能して、給油するときだけエコカーであることに気づくはずだ。
モーターのみでスーッと音もなく走り出す瞬間は、いかにもエコカーらしいのだが、アクセルペダルを踏み込むと強烈なトルクが発揮される。
ディーゼルエンジンの特徴である低速域からの大トルクに加えて、発進時にはモーターがアシストするので、スペックから想像するよりも大きな加速が得られる。モーターで補助するシーンはあまり多くないが、発進や急な坂道ではモーターのサポートが走りにも燃費にも貢献している。
また、センターコンソールのダイヤル操作で、モーターを常時駆動させる4WDモードや、最高70km/hで最大4kmまでモーターのみで走行できるZEVモード、またシフトアップポイントを高回転域まで引っ張るスポーツモードなどもセレクトできる。
「エコカーが低燃費なのは当たり前、クルマに走りの魅力を与えることは不可欠」というプジョーの思想は、スローなエコカーが普及しつつある今(編集部註:2011年)の時代に対するアンチテーゼといえるのではないだろうか。
このプジョー 3008ハイブリッド4、欧州市場では秋から発売が予定されている。ハイブリッド車の普及が著しい日本市場にもぜひ導入して欲しいところだが、インポーターであるプジョー シトロエン ジャポンによると「鋭意努力中」とのことだった。(編集部註:この3008 ハイブリッド4は、日本には導入されませんでした)
■プジョー 3008 HYbrid 4(欧州仕様) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4365×1837×1639mm
●ホイールベース:2613mm
●車両重量:1660kg
●エンジン:直4 DOHCディーゼルターボ+モーター
●総排気量:1997cc
●最高出力:120kW(163ps)/3850rpm
●最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1750rpm
●モーター最高出力:27kW(37ps)/2500rpm
●モーター最大トルク:200Nm(20.4kgm)/1290rpm
●トランスミッション:6速AMT
●駆動方式:4WD
●EU総合燃費:26.3km/L