2009年9月、フランクフルトモーターショーでメルセデス・ベンツ SLS AMGが発表されて大きな反響を呼んだ。それまでメルセデス・ベンツの各モデルのチューニングを手掛けていたAMGが初めて完全に独自開発したモデルを発表したからだ。メルセデスのAMGモデルとも、SLRマクラーレンとも違うハイパフォーマンスモデル、このスーパースポーツモデルの狙いはなんだったのか。今回は2009年秋にアメリカで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年1月号より)

あらゆるシーンで走りの力強さを実感させられる

前述のように、より合理的な生産性やコスト的要因を踏まえつつスーパースポーツカーとして相応しいポテンシャルをも獲得すべく、SLS AMGの骨格として採用されたのは、オーストリアに拠を構えるマグナシュタイア社で製作されるアルミスペースフレーム式のボディだ。

さすがにSLRマクラーレンが用いたカーボンモノコック方式に敵うはずはないものの、それでも単体重量で241kgと軽いボディのフロントアクスル後方にマウントされるのは、ドライサンプ化によって重心高を落とし、吸排気系をメインとしたリファインやドライサンプ方式を生かしてクランクケース内の残留圧力をパワーアップに活用する「ガススプリング理論」などを用いて最高出力571ps/最大トルク650Nmを発する、純AMG開発によるV型8気筒エンジンだ。

すでに、各「63AMG」シリーズに搭載されて定評ある6.2Lユニットをベースに開発されたこの心臓は、前述のような様々なポイントに加えて、トータルでは120種類以上ものパーツをリファインしたことで、型式名もM156型からM159型へと変更。徹底した軽量化も図られ、クランクケースで4kg、ピストンの鍛造化でトータル500g、スチール製のボルトをアルミ製に改めることで600gと様々な部位で減量化に励んだ結果、205kgとこのクラスでトップレベルの軽さを達成しているのも特徴だ。

画像: 各部の改良とともにドライサンプ化されて新しくM159型となった6.2Lエンジンは、フロントミッドに搭載される。

各部の改良とともにドライサンプ化されて新しくM159型となった6.2Lエンジンは、フロントミッドに搭載される。

その心臓が発する強大な出力が、強固なアルミ製のトルクチューブ内を走る、こちらも重量わずかに4.7kgと超軽量なカーボンファイバー製プロペラシャフトと7速DCTを経由し、路面を蹴り上げてSLS AMGのボディを加速させる姿はダイナミックそのもの。トランスミッションがC(コンフォート)モードでもしっかり1速ギアから発進を行うので、力強さはあらゆるシーンで文句なしだ。

その加速シーンでのワクワク感を盛り上げるのが、いかにもスポーツチューンが施されたV8エンジンらしい、派手で逞しさ抜群のサウンド。その迫力ある音色は、キャビン内ではまるでミッドシップモデルのごとく背後から耳に届くのが面白い。

一方で、クルージング時のサウンドレベルは良く抑えられている。ここでは、メルセデスファミリーの一員らしいボディコントロール性の高さが生み出すフットワークのフラット感と相まって、なかなかのグランツーリスモ的キャラクターも披露してくれる。

This article is a sponsored article by
''.