「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、トヨタ 86(プロトタイプ)だ。

トヨタ 86(2011年:初代プロトタイプ)

画像: 低いボンネットと精緻なうねりを配したボディラインが肉感的。全長4240×全幅1775×全高1285mmというサイズは、マツダ ロードスターとRX-8のちょうど中間だ。

低いボンネットと精緻なうねりを配したボディラインが肉感的。全長4240×全幅1775×全高1285mmというサイズは、マツダ ロードスターとRX-8のちょうど中間だ。

トヨタ 86の実車を見て、久しぶりに懐かしい「カッコ良さ」を感じた。そのとてもピュアな2ドアクーペ フォルムは、デザイナーがトヨタ2000GTのイメージを頭の中に刻み込み、だがけっして真似をすることなく完成させたものだという。随所にバランスよくボリューム感を配したスタイリングは流麗だ。一方で、夕暮れにリアコンビネーションランプを点灯させた後ろ姿は、まるでイタリアンスポーツを思わせる。

インテリアでは、慣性モーメントを小さくするためにオーディオなどのスイッチ類を排したステアリングホイールがスパルタンだ。大きなタコメーターの視認性の高さが際立ち、とてもわかりやすくスポーティな印象を醸し出している。シートポジションの低さも、いかにもスポーツカーらしい。運転席に座ったまま地面に手を伸ばしてタバコが消せる、というほどにシート位置が下げられている。それでも前方の視認性は良好だ。エンジンフードも非常に低く、座った瞬間にレーシーな走りを予感させてくれる。

シート、ステアリング、シフトがほぼ完璧なバランス感覚で配されたドラポジに感心しながら、いよいよ走り出すことにしよう。

真っ先に感じとれたのが、とてもしっかりとしたステアリングフィールだ。切り始めの応答感、ロールの変化、ヨーの立ち上がりなどがスポーティに味付けされていることはもちろんだが、その挙動変化をほとんどフロントまわりの動きで感じ取ることができる。リアも素直に追従してくれるので、操作に対する反応に違和感がない。前後タイヤのグリップバランスが絶妙だ。

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