モジュールの個数を自在に変化できるバッテリー「アルティウム」
2035年までに乗用車をBEV、そしてFCVなどによりゼロエミッション化すると宣言しているGMにおいて、それをリードする役割を担うのがキャデラックだ。このプレミアムディビジョンを担うブランドは、30年までに車両をすべてBEV化すると公式に宣言している。
実際、それは周到に準備が進められてきていた。コアとなるのは「アルティウム」と名付けられたバッテリーと、それを用いたBEV専用プラットフォームである。
パウチ型セルを水平/垂直に積み重ねられるこのバッテリーは、その積層枚数を自在に変化させられるためパッケージングの自由度が高い。車体の方も、バッテリーモジュールの個数を自在に調節でき、電気モーターの搭載位置やサイズもフレキシブルで、さまざまな車両サイズに対応できる。
小型車から大型ピックアップまでをラインナップするGMだけに、このモジュラーシステムの構築がBEV展開の大きなカギとなる。25年までに4箇所になるバッテリー工場の建設も含めて、準備は着々と整えられていたわけだ。
そんなキャデラックのBEV第一弾となるLYRIQ(リリック)は、まさにBEVの長所を活かしてラグジュアリーカーの新しい世界を切り拓こうという意欲的な1台である。それはまずエクステリアデザインに端的に表れている。
5m近い全長と3mを超えるホイールベース。大きさ=強さでもある
全長4996×全幅1977×全高1623mmという長く、広く、やや低めの寸法とされたSUVフォルムは、3093mmという長いホイールベースもあり、実に堂々としている。
アイデンティティである縦型のシグネチャーライトに加えて、もはや不要のラジエータグリルに代わって用いられたイルミネーション入りのブラックグリル、Cピラー部分まで引き回されたテールライトなどディテールは派手だが、しっかり「らしさ」を感じさせる。キャラクターラインの類を最小限に留めた美しい面構成が、これらディテールをさらに引き立てている。
内装もインパクトは大きい。まず目に飛び込んでくる大型ディスプレイは、何と対角33インチである。リアシートもさすがに広く、まさしくラウンジ感覚。ゆったりとしていて、しかし、かしこまり過ぎない雰囲気は、これぞアメリカンラグジュアリーだといえる。
今回、ハンドルを握ることができた車両はRWDモデルで、最高出力340ps仕様の電気モーターをリアアクスルに搭載する。バッテリー容量は102kWhで、航続距離はEPA基準で312マイル(502km)。なお、2モーター式で最高出力500ps仕様のAWDモデルも投入される予定だ。