制御に磨きがかかったAWD。軽快なハンドリングのFF
全輪制御へこだわりを持ち、AWDイメージも強いスバル。クロストレックも4つのタイヤが路面を捉え、ハンドルや走行フィールが滑らかでありながらしっかりとした印象を与え、下半身の安定感が増したように感じられた。
もっとも好印象だったのは、アンダーステア感を抱くことなくコーナーリングが可能だったAWD制御の進化ぶりだ。従来の挙動の制御にはハンドルの操舵角を使用していたのだが、クロストレックは車両の横滑り角の値を用いているという。この効果かコーナーで修正舵を加えるようなときにも、瞬時にボディ全体で意図したラインにスッと曲線的に実に自然なコーナリングが好印象だった。
一方、AWDより20kgほど重量の軽いFFモデルは、e-BOXERの素早いモーターの反応が活きる軽快さやレスポンスの良さがわかりやすく、それがFFモデルならではの扱いやすさに繋がっているように感じられた。
そもそもFFは、車両の姿勢安定に配慮して弱アンダーセッティングとなっているが、ハンドルの切り始めからススッとクルマの向きが変わる操舵感から始まり、軽快でスッキリとした走行フィール、リアのしなやかな追従性はクロストレックならではで、走りがとても気持ちいいと感じられる。
コンパクトSUVは、FFも人気がありライバルも多いが、その中でもクロストレック/XV初のFFは、とても力作だ。性能がさらに磨かれたAWD、ステアリングフィールの質感にもこだわった軽快なFFというのが、ひと言で表現したそれぞれの特徴だが、どちらもクロストレックが目指した「FUN」な走りが体感できる。
運転支援システムは、新型ステレオカメラなどを採用した最新版の新世代アイサイトを搭載する。このあたりはさすがスバル、万全である。大学の医学部との共同研究によって「仙骨を押さえ骨盤を支える構造」を採用したシートは着心地のいいアウターを纏うように自然に体にフィットしコーナーでの一体感を頼もしく、そして愉しくサポートしてくれた。
ロングドライブの疲労軽減も明らかというこのシートに身体を預け、今度はクロストレックと一緒にもっと遠出をしてみたい。(文:飯田裕子/写真:井上雅行)
スバル クロストレック プロトタイプ主要諸元
●全長×全幅×全高:4480×1800×1580mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1540(1560)kg
●エンジン:水平対向4DOHC+モーター
●総排気量:1995cc
●最高出力:107kW(145ps)/6000rpm
●最大トルク:188Nm/4200pm
●モーター最高出力:10kW(13.6ps)
●モーター最大トルク:66Nm
●電池容量:4.8Ah
●トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
●駆動方式:FF (4WD )
●燃料・タンク容量:レギュラー ・48L